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名だたるトップ企業に学ぶ「失敗を遠ざける会社」の将来が危ぶまれるワケ

2021年11月24日 公開

荒木博行(学びデザイン社長)

荒木博行

今年10月に出版された荒木博行著『世界「失敗」製品図鑑』(日経BP)は、GAFAやトヨタ自動車、任天堂、ソニーなど、国内外の錚々たる企業が世に出してきた「失敗」製品を紹介し、そこから学ぶべきことを解説した本だ。失敗の重要性を、荒木氏に聞いた。

 

失敗は、しないことではなく、して学ぶことが大事

――本書を書かれた経緯は?

【荒木】『世界「倒産」図鑑』(日経BP)という本を2019年に出すと、ネガティブなことからの学びは多いと、少なからず反響をいただきました。

ネガティブな事象は、倒産に限らず、私たちの身の回りにたくさん存在しています。そこからも学びを得られるんじゃないかということで、続編として書きました。

――そもそも、ネガティブな事象から学ぶ本を書こうと思った理由は?

【荒木】直接的には、編集者から声をかけていただいたことです。ただ、それを引き受けたのは、15年ほど前にビジネススクールで教えていた経験があったからです。

ビジネススクールでは、ケースメソッドと言って、様々な事例から学びを得るのですが、そのほとんどは成功事例です。失敗事例は圧倒的に少ない。

失敗事例は当事者が語りたがらないので教材にしにくいといった理由があるのですが、その数少ない失敗事例を取り上げると、クラスが盛り上がりました。「自分は失敗への途上にいるんじゃないか」という気づきが得られるんです。

――失敗事例を知ることで、失敗を避けられる、と。

【荒木】ただ、失敗というものは、定義が曖昧です。本書で取り上げた事例の中にも、「これを失敗と言うのか」とお叱りを受けるかもしれないものもあります。短期的には失敗でも、長期的には成功したと捉えられるものもあります。

ファーストリテイリングの野菜事業「スキップ」も、事業自体は失敗しました。しかし、スキップを率いていた柚木治氏が、後にGUの社長になり、大きく成長させています。スキップの経験を踏まえることでGUが成功しているとすれば、スキップは失敗だったとは言えないでしょう。

失敗は長期的な意味での成功につながるかもしれませんし、逆に、成功が失敗の入り口になるかもしれません。

――失敗しても、そこから学びを得て、次に活かせばいいわけですね。

【荒木】本書のメッセージは、シンプルに、それに尽きます。失敗を揶揄しても仕方がありません。

失敗は避けられるのかと言うと、仕方がないことも結構あります。本書では後半の「事業を取り巻く力学編」に挙げていますが、国が経済危機に見舞われたり、会社の経営判断が急に変わったり、テクノロジーの進化が思っていたよりも速かったりしたために失敗した事例も多い。

「変化に気づけなかったのが愚かだった」などと、後知恵では色々と言えても、「じゃあ、当事者だったら何かできましたか?」と言われると、きつい。

ただ、そうした事例も、振り返ってエッセンスを抽出し、次のアクションにどうつなげるかが大事です。当事者だと見えないことも、後から振り返れば見えてきます。

我々は、そうやって学習していくしかないんです。

――荒木さんは様々なスタートアップ企業も見ていますが、どうすれば失敗事例からの学びを活かせるのでしょうか?

【荒木】評価システムや既存事業など、様々なことと結びついたテーマですね。

既存事業がある程度成長して、それが10年くらい続いていると、スタッフの大半がオペレーションに携わる人になります。つまり、やることが決まっていて、それをきちんとやれば成果を出せる人たちです。

そうなると、新しいビジネスを始めて失敗するということに、極度に蔑んだ視線を持つカルチャーになってしまいます。すると、新規事業を始められなくなるし、失敗しても失敗だと認められなくなります。

「最近、どんな失敗をした?」と聞いて、答えられない会社は危ない。本当に失敗していないのなら、仕事がルーティン化して、硬直化している可能性があります。失敗していても言い出せないのなら、マネジメントに問題があります。

硬直化しないように、会社の中にお祭りのような揺らぎがある状態にしておくこと。そして、失敗を顕在化して語れるカルチャーを作ることが重要です。

先ほどもお話ししたように、失敗は避けられないこともあるし、してはいけないものでもありません。小さな失敗をしておかないと、長期的に見て大きな失敗につながることもあります。小さな失敗をしながら、それを次に活かすことが大事です。

――なかなか難しそうですね。

【荒木】そうですね。日本企業だから難しいということではなく、海外の企業でも難しい。

ポイントは、失敗を認められない構造を作らないことです。例えば、会社のリソースをすべて投じてしまうと、絶対に成功しなければならなくなって、失敗できなくなる。そうなると、失敗できないカルチャーができて、小さな失敗でも言い出せなくなります。

――リソースが限られているスタートアップは、そういう状況に陥りやすい?

【荒木】そんなことはありません。失敗の程度の問題です。

メールの文面でちょっとしたミスをする、というのも、失敗と言えば失敗です。そんな小さな失敗も許されず、すべて上司がチェックするような大企業もあるでしょう。そういう意味では、会社の大小も関係ないし、洋の東西も関係ありません。

『世界「失敗」製品図鑑』で取り上げた失敗は、『世界「倒産」図鑑』で取り上げた失敗よりも、小さな失敗です。倒産までには至っていませんから。倒産するのは、小さな失敗から学ばず、むしろ隠しながら、ズルズル引きずってしまった会社です。失敗するほうが健全ですよ。

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