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「年をとったら甘え上手が勝ち」間寛平が語る、いまの若手の育て方

2022年03月17日 公開

間寛平(お笑い芸人・吉本新喜劇ゼネラルマネージャー)

間寛平

吉本新喜劇のレジェンド・間寛平さんが、このたび吉本新喜劇GM(ゼネラルマネージャー)に就任した。「若手が活躍できる場を提供したい」と熱く語るその理由とは? 

また、多くの後輩やスタッフから愛される"人間力"の秘密にも迫った。(取材・構成:内埜さくら、写真撮影:まるやゆういち)

 

宝物である新喜劇をなんとか元気にしたい

――吉本新喜劇(以下、新喜劇)のGM就任おめでとうございます。このオファーがきたときの率直なお気持ちは?

【寛平】正直、「僕で大丈夫かなぁ」というのが本音でした(笑)。嫁がタイトルを考えてくれた全国ツアー(「間寛平芸能生活50周年+1記念ツアー いくつになってもあまえんぼう」)の東京公演が終わったあと、吉本興業の岡本昭彦社長から打診されたんです。「若手を育ててもらえませんでしょうか」と。

でも、僕は70歳を過ぎているし、新喜劇の現場を離れて35年以上経つから迷ったんですけど、同席していた嫁が背中を押してくれました。「長年大事にしてくれた会社へ、恩返しのつもりでやってみたら?」と。GMに就任した今は、「この仕事は僕がやらな絶対無理だった」と思っていますね。

――寛平さんでなければできないこととは、具体的には?

【寛平】閉塞感が漂う新喜劇に風穴を開けることです。今の新喜劇は座員が100人以上もいて、ただでさえ若手がなかなか出ていかれへんうえに、出られる劇場も限られているんです。

僕らが若手だった頃は自由で、怒られても試す場を与えられていました。先輩から「それ、やめとき』と言われてもバンバン新しい芸をやって上達していったのに、今の若手にはそのチャンスすら与えられていません。「それじゃあ飼い殺しやん!」と思いました。今の土壌を耕して、若手が活躍できる場を提供するのは、僕が適役かなと。前向きに、今の新喜劇になった原因をつぶしていきます。

新喜劇で嫁と知り合い、子供もでき、孫もできました。今こうして生活できているのも、新喜劇があったからこそ。僕にとって宝物ですから。

――人気投票で上位30位までの芸人が出演できる興行も、計画しているそうですね。

【寛平】1人が1人に投票すると偏るから、1人が3人を選ぶシステムにしようと思っています。そうしたら、劇場には出ていないけれどYouTubeとかSNSで頑張っていて、登録者数が何万人もいる子が一気に売れるかもわからへん。あの子らにも生活があるから、環境だけは与えてあげたいんです。

ただし(池乃)めだかちゃんと僕は、30位以内に入らへんかもしれません。僕らを知っている年代は、あまりネットをせえへんから。入れへんかったら僕は、舞台には出ずにもぎりをします。

 

年齢の垣根を超えて後輩と仲良くなれる接し方

――(笑)。ちなみに、"寛平さん流若手育成方法"は?

【寛平】とにかく、褒めて褒めて育てます。「そこええで」とピンポイントで褒めるんです。昔だったら叩きつけられるようにボロカス言われて、「悔しかったらはい上がれ!」と育てられるのが一般的でしたけど、今の子は怒るとついてきません。辞めてしまうかもしれない。

さらに言うと、「パワハラされた」って泣きつく子も多いって聞きますし。最近なぜ、「~ハラ」みたいな言葉であふれているんでしょうねえ。

――ところで、寛平さんが年齢性別問わず好かれ、慕われる理由をおうかがいしたいです。自己分析は難しいかもしれませんが、ぜひ。

【寛平】人と接するとき、相手よりちょっと下に降りるんです。たとえ相手が年下でも、自分から年齢的に降りて合わせます。だから中川家とかテンダラーとか、いっぱいいてる後輩は、僕をめちゃめちゃイジってきよります(笑)。イジられたら僕は対等に、友達のように返します。そうすると向こうも話しやすいのかもしれへん。

「キングオブコント2021」でダダスベりして激しく落ち込んでいるときは、霜降り(明星)のせいやが慰めに来てくれました。「せいや、俺アカンかってん。スベりまくったんや」と泣きついたら、「何言ってるんですか、師匠! その年でキングオブコントに出るなんて、すごいことですよ!」と励ましてくれて。

相手より下に降りると、年齢の垣根を超えて仲良うなっていくんではないでしょうか。意識してやっているというよりは自然にしているだけなんですよ。

 

後輩に甘える勇気を持ったほうがいい

――上司世代はプライドが邪魔をして、部下の立場に降りて会話できない人もいるかと。

【寛平】プライドは捨てなあきませんわ! 変なプライドがないから僕は、若い子とも友達みたいな関係を築けてるんだと思います。

そして僕は、誰にでも気軽に迷わず「頼んます~」と声がけもします。全国ツアーのときに作ったTシャツのイラストも、(野性爆弾の)くっきー!に、「なあ、頼むわ~」って。

僕、誰にでも頼むと同時に甘えます。皆さんも、後輩に甘える勇気を持ったほうがいいと思いますよ。甘えてくる年上を、かわいいと感じる年下は案外多いみたいですから。甘えると、相手が大事に大事にしてくれるようになります。年とってきたら、ホンマに甘え上手が勝ちなんです。

――冒頭でお話されていた、奥様にも甘えているのですか。

【寛平】甘えるいうよりは、すべてにおいて僕をうまく舵取りしてくれてます。昔、結婚したばかりなのに借金だらけでどうしようもなかったときに、消費者金融に利子の免除をかけあってくれたのも嫁でした。

嫁に「どこのビル?」と聞かれて、僕が車を運転して到着すると、当時0歳だった長女を嫁がつねって泣かせてビルに入っていく。金融業者の同情を誘う作戦です。嫁は、「ここで働かせてもらえます? そうせんと(借金が)払われへん」とずっと粘って、そして利子をまけてもらってビルから出てくる。そして、「アンタ、次はどこ?」と聞かれて同じことを何度も繰り返しました。

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