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名刺なしで付き合える知人はいる? 「50代こそ可能なキャリアアップ」の考え方

2022年05月05日 公開
2023年03月31日 更新

前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

 

「7つの質問」でwillとcanを見直そう

――プレイヤーとマネージャーのどちらを選択すべきか。また、どんな職場で、どのような働き方を目指すべきか。それらを考え直すうえで、多くの人が「must(しなければならない)」にとらわれすぎている。

「今までは、会社から与えられたmustに懸命に取り組むうちに、自然とcan(できること)が身についてきた人が多いと思います。しかし会社は、幹部候補から外れた社員や、役職定年を迎えた社員には、働きがいのあるmustを与えてくれることは、もうありません。

ですから、今後は自分ならではの仕事は自分で見つけなくてはいけなくなります。それらを考えるときに大切になるのが、自身のwill(やりたいこと)とcanを見つめ直してみることです」

――どうすればwillとcanを明確にできるのか。

「まずは、これら七つの質問を言語化することです。」

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【キャリアビジョン構築】
Q1.自分の人生があと1年だとしたら、何をやりたいですか?

【マインドセット】
Q2.なぜ、その「やりたいこと」に挑戦しないのですか?
Q3.やりたいことができない本当の理由は何ですか?

【相場観・市場理解】
Q4.名刺がなくてもつきあえる社外の知人は何人いますか?

【自己認識・強みの棚卸し】
Q5.会社の外でも通用する「自分の強み」は何ですか?

【キャリアプラン・腕試し】
Q6.その強みを磨き、不動のものにするためには何が必要ですか?

【強みを補強する】
Q7.今のうちに何から始めますか?
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「とはいえ、よくわからないという人もいるはず。そこで、ぜひ実践していただきたいのが、副業を通じて、自分なりの答えを明確にしていく方法です。

例えば、知り合いの伝手をたどって、中小企業やベンチャー企業で働かせてもらう。もし副業禁止なら、有給休暇を取得して無償で働くのもいいでしょう。

自社以外の会社で働いてみると、自分ではごく普通の能力だと思っていたことが他社ではすごく評価されたり、逆に、まったく相手にされなかったりと、新しい発見があります。

会議の運営の仕方や情報共有のノウハウ、業界に影響を与える法改正や技術進化があったときに、その情報を社内に浸透させるための仕組み作りなど、大企業で働いている人にとっては特別なスキルではないと認識されていることが、中小企業やベンチャー企業では重宝されることがあります。

営業職で言えば、エクセルを使った管理表の作成といったベタなスキルが、ものすごく喜ばれたりします。つまり、副業を通じて、社外の労働市場における自分のcanがわかるわけです。

また、腕試ししているうちに、『自分はこういう仕事をしているときが活き活きとしているな』というwillもわかってくるでしょう。

こうして見えてきた『自分は何ができるか』と『何がやりたいか』を組み合わせることで、今後のビジネス人生での働きがいある仕事を探し出していけばいいのです」

 

収入が増えない時代に考えたい「お金より大切な働く理由」

――前川氏の指摘はもっともだが、多くの人が今の会社に働きがいを感じなくなったあとも辞めずにしがみついているのは、お金のためだ。

「確かに、転職すれば年収が減るケースが多いでしょう。独立しても、いきなり高収入を得ることは難しい。しかし、今の働き方が持続可能かどうか、よく考えてみてください。この先、残り20~30年働けますか?

お金は働くうえで大切なものですが、それがすべてではありません。嫌な仕事で身体を壊し、収入が途絶えれば、それこそ終わりです。お金の心配もわかりますが、自分のwillとcanを見極め、他者から喜ばれる仕事を続けていれば、やがて報酬も上げられます。自分の市場価値さえ磨いていけば、お金はあとからついてくるのです。

また、皆さんに考え直していただきたいのが、『世帯主である夫だけが外に出て働く』発想です。夫の収入が減少しても、夫婦で共働きをするスタイルに転換すれば、家計を補えます。30代以下の世代では、もはや常識です。

さらに言えば、今の日本では2000兆円近くに達する個人の金融資産の60%を60歳以上の高齢者、つまり現役世代の親世代が有しています。両親がその資産を使い切れずに亡くなった場合、お金は相続税として国に持っていかれます。それならば、親とよく話し合い、そのお金を生前贈与で孫の教育費に使ったほうがよほど建設的です。

もう一つ、皆さんにやってみてほしいのが、ギリギリまで生活を切り詰めた場合、最低限どの程度の収入が必要かをシミュレーションすることです。シミュレーションもしないままに、漠然と『収入が落ちるので、このままがいい』と最初から転職や独立を諦めてしまうのは、もったいないのではないでしょうか」

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