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上手い企業は“動作の絵コンテ”を用意する? オンライン配信成功のコツ

2022年07月18日 公開

平田幸一(〈一社〉日本オンライン講師アカデミー代表理事)

 

画面に注目しないと情報が完結しない状態を作ろう

次に気をつけたいのは、動画のはずのオンライン配信が「静止画になっていないか」ということです。つまり、講師がずっと同じ姿勢で話しているだけでは、受講者からは静止画のように見えてしまうのです。

動きが止まった状態になると、受講者の注意が散漫になります。オンラインでは、画面の向こうの相手が何をしているかまではわかりませんから、受講者が実は別の作業をしていることもあり得ます。

画面に注目してもらうためには、いかに画面を動かすか、画面をアクティブにするかを考える必要があります。手振りを加えたり、モノを見せたり、パワーポイント資料に切り替えたりするだけでも効果的です。

パワーポイント資料の見せ方一つ取っても、受講者の注意を引く見せ方と、そうでない見せ方があります。

初めからそのページの情報を全部見せてしまうと、受講者の目が画面から離れたり、話に集中しなくなったりします。欲しい情報を視覚で先取りしてしまったら、別のところに意識が向くのも自然なことです。

画面を見続けてもらうには、情報を少しずつ出していくのがいいでしょう。

例えばパワーポイント資料なら、何も書かれていない白紙の状態から始めて、アニメーション機能を使いながら図解や図形を小出しにしていきます。

画面に動きがあれば、受講者は画面に注目してくれますし、図解や図形がグラフィックレコーディングのようにその場で生成されていくのを追いながら、学習が深まる効果も期待できます。

ポイントは、画面を見ないと情報が完結しない状態を作ること。資料など目から入る情報と、講師の話を聞くという耳からの情報。これらをうまくシンクロさせて、どちらにも注意を向けてもらうための工夫が必要なのです。

 

キーワードのみの台本でライブ感が生まれる

アクティブな画面で受講者の注意を引きつけようとすれば、事前の準備が欠かせません。

まず、全体の構成を決めます。私が提供するオンラインセミナーであれば、最初に全体論を見せ、学習の動機づけを行ないます。そのあとでディティールの説明に入ります。大きな概念から始めて、身近な事例に落とし込んでいくのがポイントです。

また、学習は一方通行ではなく、双方向により深まっていくものなので、受講者が自ら考えられるワークを取り入れたり、質疑応答の時間を組み込んだりします。ビジネスに正解はないので、自分で考えるというアプローチを通した学びは重要です。

全体構成が決まったら、それをプログラムに落とし込んでいきます。時間軸と、それに合わせて画面上に提示する視覚情報をあらかじめざっくりと決めておきます。マンガでいうネーム(絵コンテ)を作成するのです。私の場合はノートを使って行ないます。

まずはページの左半分に、自分が話す内容を時系列で縦方向に並べていきます。びっしりと台本を作るというよりも、キーワードや短いフレーズを書くにとどめておきます。

本番では、それらの文字列を見ながら、自分が話すことを頭の中で解凍していくイメージです。そうすることで、抑揚のついたライブ感のある語り口調が生み出せます。

キーワードやフレーズには、自分のオリジナルな表現を盛り込みましょう。その人の言葉や、その人の目線での情報が加わることで、受講者の記憶に残ります。

次に、時系列に並んだキーワードやフレーズの右側に、画面で見せる視覚情報を加えていきます。「この話をしているときに、この図形や図解を見せよう」といった具合です。

その際には話す内容をそのまま文字にして画面で見せるのではありません。話す内容を文字にすると、それを見ながら同じ話をすることになり、聞く人を飽きさせる原因になります。

繰り返しになりますが、目からの情報と耳からの情報は、お互いに補い合う関係がベストです。

例えば、全体像は図解で示して、細かいディティールは言葉で説明する。

つまり、講師の言葉を聞かなければ情報が完結しない状態にするのです。これが受講者の注意をつなぎ留めるためのコツです。

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