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「女子力男子」の消費力...女子化する男子の実態を徹底分析!

2015年03月10日 公開
2023年02月01日 更新

原田曜平(博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)

原田曜平

もし女子力男子が部下になったら……

あなたの会社に突然、女子力男子の新入社員が配属されたとします。皆さんが新入社員を指導する立場だとしたら、彼らとどのように接しますか。

若い女子力男子に対して、徹夜で仕事をすることを美化して「根性を見せろ」と檄を飛ばすのはもちろん逆効果です。「おじさん熱いなぁ。俺は家で料理作りたいから、早く帰らせてよ」としか思われていません。

ややもすると、ここで「仕事ができない男子」というレッテルを貼りかねません。しかし、男性的なエネルギーが求められていた時代とは生きてきたステージが違うのです。

ここでコミュニケーションギャップの理解を放棄するかどうかで、新入社員の働きぶりはまったく違ったものになるでしょう。

解決策をお伝えすると、女子力男子を、たんに「仕事ができない男」と烙印を押すのではなく、やはり貴重な戦力として認めてあげるべきです。普段から女性誌を読み、美容情報に関心を示し、料理にも精通している力は、ある種の専門性を習得しているのと同じです。

われわれの世代にはない女子力男子の関心の深さやアンテナの本数と幅広さを仕事でどう活用してあげるか、という目線で接すればいいのではないでしょうか。

化粧品開発を例にとれば、女性の市場が圧倒的に大きい化粧品の企画を美容に無頓着なおじさんに任すより、ユーザーとして美容製品を使いこなしている若い男性が担当したほうが、消費者に寄り添ったアイデアや洞察が生まれるのは明らかです。

昔の社員と同じ力を要求するのではなく、お互いの役割を決めて、コラボレーションする感覚で仕事を分担するのが理想的な働き方ではないでしょうか。

「俺が徹夜して企画書にまとめるから、おまえは周りの女の子たちのトレンドを調べてこい」というのは上司には酷かもしれませんが、仕事の効率は向上すると思います(笑)。

団塊世代より下の新人類世代~バブル世代は、上の世代からガチガチに管理されてきた辛い思い出があるせいか、自分より下の世代には、本人の裁量に任せようとする寛容さが強い気がします。

たとえばプロ野球を見ても、新人類世代よりは少し上ですが、読売ジャイアンツの原辰徳監督や日本ハムファイターズの栗山英樹監督は、その上の落合博満さんや野村克也さんといった世代の監督に比べると、柔らかい印象があります。

栗山監督は大谷翔平選手の「二刀流」を認めたり、なかなか結果が出ない斎藤佑樹選手を辛抱強く起用し続けるなど、若者に理解を示す姿勢が見られます。

考えてみれば、バブル世代~団塊ジュニア世代は若いころから消費する習慣が身体に染みつき、新しいもの好きが多い。女子力男子が広がることで、新しいライフスタイルだとして流行に飛び付き、「女子力おじさん」に変身する人は意外に多いと私は見ています。

もちろん、バブル世代より上の世代は女子力男子を理解できないかというと、そうではありません。最近、団塊世代の方から「生け花や舞踊を始めた」という声をよく聞きます。

社会的抑圧がなくなったことで、次第に解放された女子力おじさんも増えてくるでしょう。これは日本に限らず、アジア全域を含めたマスマーケットに繋がる可能性があります。だからこそ、増え続ける女子力男子を若者に限定した傾向と決め付けず、関心をもつことが重要なのです。

 

【原田曜平(はらだ・ようへい/博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー)】
1977年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所などを経て現職。日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行なっている。近著に、『ヤンキー経済』(幻冬舎新書)、『女子力男子』(宝島社)がある。

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