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どん底の中国経済―バブル崩壊は止まらない



2015年09月25日 公開

渡邉哲也(経済評論家)

『Voice』2015年10月号より》

世界を巻き込む金融危機は日本経済に影響するのか

 

 ミンスキーの金融不安定仮説と  中国のいま

 中国経済の瓦解が進んでいる。6月中旬から始まった中国の株式バブル崩壊、ギリシャ問題深刻化を受けた7月8日にはついに最高値から30%を超える水準まで暴落した。中国政府はこれを食い止めるため、プライス・キープ・オペレーション(PKO)等さまざまな強行策を取ってきた。これにより一時的に立ち直ったかのように見えた株価であるが7月28日に再び暴落を起こし、セカンド・ショックが発生してしまった。その後の天津大爆発という実体経済に大きな負の影響を与える出来事を挟み、お盆明けの8月18日から再び下落を始めた。実体経済の悪化予測が深まるなかで8月24日には株価が年初来水準を割り込み、政府が取ったさまざまな政策は無に帰したといえる。

 中国のバブル崩壊は、中国のみならず世界の金融市場にも大きな影響を与えている。中国発の株価崩壊は米国や欧州にも波及し、それがアジア市場にも大きな影響を与えてしまった。日本も例外ではなく、日本の株価も一時1万8000円を割り込む展開になっている。

 これにより世界で失われた時価総額は7兆ドルを超える水準になっているといわれており、市場からの大量の退場者を生み出している。世界の投資家はリスクオフに動き、これが市場全体の資金量を一気に消失させている。また、これに連動する形で為替も大きく動く展開になっている。これは手仕舞いに伴う資金の巻き戻しが発生しているためであり、「世界のリスクが高くなる=円高に動く」というサブプライムの際からの流れは変わらない。

 これは日本経済の信頼性が高いことの裏返しであり、決して悪いことではないのであるが、円高は企業の業績を大きく悪化させる要因であり、「円高=株安」という形で市場に大きな影響を与えてしまうのである。そして、この繰り返し来る波により震源地である中国以外の市場では織り込みが進むとともに変動リスクは緩やかなものになっていく。

 しかし、震源地でありバブルに踊った中国にとって、これは非常に大きなダメージになる。のちに述べるが中国の株式バブルは他の市場のバブルが臨界に達したためであり、最後の砦的な意味合いがあった。この中国の大変動を受けて、外国人投資家たちの離脱が進むことになる。同時に張り子の虎といわれてきた中国経済の真の姿が国際社会に知れ渡り、中国を儲けの対象にしてきた人や国に態度変化を生むのである。

 ところで昔から、経済は生き物であるといわれているが、現在の世界をそのような観点から見てみよう。経済学においても、経済を生態系に例えたり、社会学的に捉える動きが強まっている。いわゆるシカゴ学派を代表とする新自由主義の台頭により忘れられていた「ハイマン・ミンスキー」の再評価がその典型例であるといえよう。ミンスキーの理論は、サブプライム問題時、世界最大級の債券ファンドであるPIMCOのポール・マカリーにより取り上げられ、再び脚光を浴びることになったのである。ミンスキーの金融不安定仮説とは以下のようなものである。

(1) 経済が好調なとき、投資家はリスクを取る

(2) リスクに見合ったリターンが取れなくなる水準まで、リスクを取る

(3) 何かのショックでリスクが拡大する

(4) 慌てた投資家が資産を売却する

(5) 資産価格暴落

(6) 投資家が債務超過に陥り、破産する

(7) 投資家に融資していた銀行が破綻する

(8) 中央銀行が銀行を救済する(“Minsky Moment”)

 そして、最初に戻るというものである。

 彼は金融を「通常金融」「ヘッジ金融」「投機的金融」「ポンツィ金融」という4種類に分類し、ポンツィ金融の割合が高まれば高まるほど金融全体が不安定化するという理論である。では、ポンツィ(Ponzi)とは何かという話になるのだが、ポンツィというのは出資金詐欺やねずみ講で有名になった詐欺師の名前であり、詐欺的金融をポンツィ金融やポンツィスキームと呼ぶのである。

 では、いま中国はどの過程にあるのかということになるのだが、現在、中国は(3)と(4)の過程にあるといえる。そして、バブル崩壊の本格化は(5)のプロセスが発生したときに明確化する。

 日本でもそうであったように、バブルは弾けてからわかるものといわれるが、株価暴落のような象徴的出来事と小康状態を繰り返しながら、被害が経済全体を蝕んでいくのだ。そして、それは短期的なものから長期的なものに波及し、金融システムそのものを壊していくのである。バブルの崩壊は連鎖するのだ。

 この連鎖には商品の時間的性格から時間差が生じる。短期的商品の代表格が市場で容易に売却できる株式であり、中長期的な商品の代表格が換金に時間がかかる不動産や掛ける期間が長い保険になる。現在は、さまざまなデリバティブやリートのような債券化商品の登場により、この商品間の連動性は高まり、連鎖するまでの時間が短くなり、影響も大きくなる傾向にある。

 再び中国に戻ろう。中国の株式バブル発生過程と前提条件を見ていこう。中国の株式は、6月中旬の最高値をつけるまでの1年間に約2・5倍程度、年初から60%近く上昇していた。この原因にはさまざまなものがあるが、最大の理由は他の商品の利回りがリスクに見合わなくなったためであり、魅力的な投資先がなくなったことが原因だと考えられている。

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第2のサブプライム問題か >



著者紹介

渡邉哲也(わたなべ・てつや)

経済評論家

1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。内外の経済・政治情勢のリサーチ分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行なう。著書に、『中国壊滅』『ヤバイ中国』(以上、徳間書店)、『「瑞穂の国」の資本主義』『世界の未来は日本次第(共著)』(以上.PHP研究所)など多数。近著に『日本人が知らない世界の「お金」の流れ』(PHP研究所)がある。

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