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がんと健康の常識、非常識〜抗がん剤では「がん幹細胞」は殺せない!?



2015年12月20日 公開

白川太郎(医学博士)

新しい統合医療と混合診療の壁

 

 ――白川先生のクリニックでは、リンパ管の中に確実に届き、なおかつ女王蜂のがん幹細胞まで叩ける治療法を実践されているということですね。具体的にはどのような治療をしているのですか。

 白川 「遺伝子治療」「温熱治療」「免疫治療」と、サプリメントを取り入れた「栄養療法」を加えた4つを組み合わせた統合医療を実践し、実際に効果を上げています。

 まず、無限に分裂するがん細胞の動きを止めるための遺伝子をリンパ管の中に送り込む「遺伝子治療」を行ないます。次に、40度を超える高温に弱い性質を利用して、リンパ管の中に潜むがん細胞を直接叩くために、強力な遠赤外線を当てて体全体を温める「温熱治療」を施す。そして体内から取り出したがん細胞と闘う免疫細胞のNK細胞を、機能を強化したうえで再び体内に戻し、攻撃型T細胞では対応できないがん細胞への攻撃力を高める「免疫治療」を行ないます。

 さらに、サプリメントを取り入れた「栄養療法」で全身状態を改善することで、1+1+1+1=4ではなく、時にそれ以上の相乗効果を得られる新しいがん治療です。この治療法と合わせて、病状をモニターするため適宜血液中のがん遺伝子を測定しています。自由診療ですから治療費は全額患者負担です。

 ――治療の成果を教えてください。

 白川 これまで私は500人の患者を診てきました。そのほとんどがステージ4の末期がん患者の方ですが、治療有効率(3年生存率)を約60%にまで伸ばすことができました。国立がんセンターや大学病院といった権威ある拠点病院におけるステージ3、4の治療成績と比べて、治療有効率の高さは明らかです。臨床数が少ないとはいえ、進行・末期がん治療における大きな進歩といえる成果だと思います。

 ――3大治療、とくに抗がん剤治療の行き詰まりをかなりの研究者や医療者が感じている。にもかかわらず、治療現場の多くで3大治療を組み合わせる標準治療が選択されているのはなぜですか。

 白川 理由はいろいろ考えられます。世の中に3大治療以外の治療法は山ほどありますが、ありすぎてどれが効く/効かないの判断ができない。ましてや一人ひとり違う患者に合う治療法を選ぶなどとてもできません。とくに大学病院などの大きな病院ほど保身からマニュアル診療優先の傾向が強い。ガイドラインに則った治療をしていれば、結果はどうあろうと医療者と病院側の責任を問われることがないからです。

 制度上は、混合診療という大きな壁があります。医師個人がその患者に保険適用外の治療法がベターだと確信していたとしても、保険診療を順守する病院の方針に反して混合診療を選ぶことは事実上不可能です。この壁は大きいと思います。

 ――医療行政のほうから新たな動きはありませんか。

 白川 免疫治療が第4の治療として保険適用されるという話は耳に入ってきます。どの大学病院でも治験と称して始めていますし、2011年のノーベル生理医学賞は免疫療法の一種である「樹状細胞の役割」を解明したスタインマン博士らが受賞しました。世界の権威が認めた治療法として、いずれ現実にそうなるだろうと思います。ただ、混合診療を認めないまま、高額の免疫治療を保険適用する方針のようですから、何かの治療を保険から外さないと、医療費の増加に歯止めがかかりません。混合診療の解禁以外に妙案があるとは思えないのですが。

 

がん発生の仕組みをがん予防に生かす

 

 ――日本人のがん死亡者数は年間約36万人(2013年、国立がん研究センター調べ)で、いまや男性の2人に1人、女性の3人に1人が生涯のうちに何らかのがんにかかると推察されています。「国民病」ともいえる「がん」との付き合い方、予防に関する考え、行動も最新の知見に基づいて変える必要があるのでしょうか。

 白川 そうです。がんの新常識を身に付け、予防や再発防止に役立て健康寿命を延ばす。そのためにはまず、がん発生の仕組みを知ることが重要です。じつは健康な人でも、体内では毎日3000~5000個の「がん細胞の元」が生まれています。人の体内では約60兆個の細胞が日々、細胞分裂を繰り返しているのですが、その際に紫外線や放射線、食品などに含まれる化学物質、ウイルス、ストレス、活性酸素などの「発がん因子」によって細胞の遺伝子が傷つけられ、コピーミスが生じるためです。

 ただ、この段階はまだがん細胞ではなく、「発がん遺伝子」が作動した、正常な細胞から変異した異形成の細胞にすぎません。人の体内には、がん細胞の分裂を止める「がん抑制遺伝子」があり、発がん遺伝子を正常な遺伝子に修復してくれます。つまり、異形細胞の段階であれば、まだ正常細胞に戻れます。食事や生活習慣の変化など、何らかの要因で正常細胞に戻ることがよくあります。

 ――傷ついた遺伝子を自動的に修復する機能が備わっているわけですね。

 白川 その一方で、体内にはがん抑制遺伝子の働きを邪魔したり、異形細胞の分裂を応援する「発がん促進因子」も多数存在しているのです。血液や体液中にある活性酸素、過酸化脂質、化学物質、有害毒素などがその代表です。発がん促進因子のせいで、がん抑制遺伝子の働きが邪魔されると、遺伝子が変異したままの形で増殖を始め、分裂して新しく生まれる細胞に引き継がれます。ここまで来ると立派ながん細胞です。

 ――体内にはまだがん細胞を取り締まる「免疫細胞」という警察組織があります。

 白川 免疫細胞には、がん細胞という異物を察知して食べてくれる「マクロファージ」、異常な細胞を見つけて攻撃を仕掛ける「攻撃型T細胞」、体内をパトロールして異常な細胞を見つけて殺す「NK(ナチュラルキラー)細胞」などがある。そして体内では、毎日新たに生まれる異形細胞やがん細胞と、5000勝無敗の闘いが繰り返されます。

 しかしあるとき、たった1つのがん細胞が「違法改造車」と見破られない外見をもち、免疫細胞をだますことに成功するのです。1度、取り締まりを擦り抜けると、体の中で大幅な「法改正」が行なわれないかぎり、基本的には2度と免疫細胞に退治されることがないので、5~20年の時間をかけて1㎝のがんへと成長していきます。この1㎝のがんが、倍の2㎝、さらに倍の4㎝に成長するまでの期間はおよそ数カ月です。増殖して大きくなったがんは原発巣を離れ、リンパ管などを通じて体内の別の臓器や組織へ転移していく。転移した進行がんに標準治療が効きにくい理由はすでに説明したとおりです。

 

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