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「IoTの伝道師」が語る日本人の美徳とこれから100年の産業モデル

2016年01月09日 公開

帝都久利寿(コネクトフリーCEO)

任天堂のゲーム機のおかげ

 

 ――知日派としての帝都さんの原点は、どの辺りにありますか。

 帝都 私は幼いころ、シアトル郊外の田舎に住んでいました。3歳のとき父に買ってもらったマッキントッシュ・コンピュータが技術者としてのスタートで、5歳にはプログラミングを始めていました。同時に任天堂の家庭用ゲーム機が家にあったおかげで、家族内のコミュニケーションにつながった記憶があります。もし日本という国がなかったら、私の家族に対する幸せな思い出は違ったものになっていたかもしれない。だから最近、格闘ゲームや戦争ゲーム、標的を撃ち殺す殺伐としたゲームソフトばかりになっているのは気になるところです(笑)。

 ――たしかに、家族みんなで遊べる類のゲームではないですね(笑)。

 帝都 Wiiだったらいいかもしれないけど。私は昭和63(1988)年生まれで、当時は崩壊前のバブル絶頂期。ゲームを含めて日本の文化が私の住むシアトルの田舎まで浸透しており、日本に尊敬の念をもつアメリカ人が大勢いました。日本製のカメラも好きで、キヤノンやニコンなど、メイド・イン・ジャパンのカメラを使って写真を撮ることで、世界中の人たちがハッピーになっているでしょう。その日本企業と一緒に、ピースフルでハッピーな世界をつくりたい。

 ――メイド・イン・ジャパンから受けた恩を返したい、という気持ちもあるわけですね。

 帝都 私には日本を救おう、などという偉そうな考えはありません。ただ自分には、「IoTこそ日本企業の道である」ということがはっきり目に見えています。山の頂上がそこにあるから登る、ということ。ガイド役になって日本の皆さんと一緒に山頂まで登り、世界中に「これほど効率よいものがあったのか」と気付かせたい。その結果として、日本という国に何らかの貢献ができれば幸せです。まあ、一つの目標としては、いつか日本に「大帰化」したいですね(笑)。

 ――「大帰化」という言葉自体、大半の日本人は知らないと思います(笑)。「日本に特別の功労のあった外国人について、法務大臣が国会の承認を得て帰化を許可する制度」(『大辞林』)で、前例はまだ誰もいないそうです。

 帝都 だからこそ面白いわけです。そもそもアメリカであればこういう法律自体、考えもしませんよ。フロンティア・スピリット(開拓者精神)とプライドがあるから、「外国人がアメリカを救うのは認めない」といって他国の人の功績を讃えようとはしません。アメリカの歴史は、1776年の独立宣言から240年弱で、日本は1000年以上の長い歴史をもちながら、言語や文化は変わらずジャパンのまま。ローマ帝国だって滅びたし、現在のアメリカも社会的にそうとう深い問題を抱えている。日本が長いあいだ育ててきた「平和」の価値や美徳の中身を分析して、何らかのかたちにすることが必要ではないか。漫画やアニメを含む文化の影響で、多くの人が日本をより詳しく知りたいと考えています。世界の要望に応えて、日本の文化や美徳をもっと発信する努力があってもいいかな、と思う。

 

日本の美は「木」の姿

 

 ――帝都さんの考える「日本の美徳」とは、何でしょうか。

 帝都 私は「美徳」という言葉が大好きなのですが、それは「美(beauty)」と「徳(goodness)」という二つの素晴らしい単語で成り立っているから。まず「美」の言葉からいうと、「美しい」と「キレイ」は違います。私が美しいと感じるのは、絶えず成長の可能性を秘めながら長い期間を経て完成され、かつひとたび消えてしまったら、2度とつくれないもの。たとえば、「木」の姿に象徴的な美を感じますね。

 山の木は長い時間をかけて台風や梅雨、降雪など苛烈な環境のなかで育つ。自然のものでありながら、生きるために枝を伸ばす角度、葉を広げる方向まで、計算したかのように考え尽くされている。つねにシンプルで、無駄がない。木の美しさは日本刀の美に通じていて、一言でいえば、要らないものを「削ぎ落とす」。鉋で木材を削るような、時間と労力をかけて磨かれた美しさがあって、日本の美は自然そのものに近いのではないでしょうか。

 ただし「削りすぎる」のも問題で、日本人の美意識であるかどうかは別として、会社は予算を削りすぎる傾向があるし、サラリーマンは自分の生活を削りすぎている。たまに新しい概念を取り入れてリッチにしないと、せっかくの日本の美がやせ細ってしまう。

 ――日本の美徳のうち「徳」についてはいかがでしょう。

 帝都 たとえば結果が出なかった人に対して、「あの人、頑張ってはりましたな」(京都が長い帝都氏、ここでつい方言が出る)とねぎらうようなところです。敗者や弱者に対する思いやりがあって、結果がすべての欧米社会ではまず見られない光景です。

 ものづくりに決して手を抜かない、というのもそう。私が日本に来てみて感激した電車は、新幹線ではなく、サンダーバード(大阪駅―金沢駅・和倉温泉駅間を走る特急列車)です。何もない山の中を通るのに、軌道の上に電柱が立ち、電線が張られている。電車のために必要なインフラを、特別の手間をかけて敷くわけです。アメリカにいたとき、シアトルからサンディエゴまで2日間ぐらい、アムトラック(全米鉄道旅客公社)のディーゼル機関車に乗ったことがあります。お尻が痛かったけれど、山の景色がよくて「こんなところに機関車を走らせたアメリカは凄いな」と感じました。

 ところがサンダーバードは、同じような山の中でディーゼル車を使わず、電線をわざわざ引いて電車を走らせている。アメリカ人は「電線づくりは時間がかかるからディーゼルにしよう」と考えるのが普通ですから、ものづくりがどこかで中途半端。一方、日本人は多額の設備投資や時間がかかっても、最も効率よいシステムを望むわけです。

 

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