Voice » 政治・外交 » 拳骨拓史 共産党スパイ五万人の恐怖

拳骨拓史 共産党スパイ五万人の恐怖

2016年11月17日 公開
2022年12月07日 更新

拳骨拓史(作家)

自衛隊に対するスパイ工作

 中国は1992年に「中国共産党中央七号文件」を全国の省・軍に配布し、対外情報収集の積極化を図って以来、現在まで情報工作を実施しているが、とくに中国が日本から獲たいと考える情報は「政治」「防衛」「マスメディア」「電子機器」「通信機器」「反中国団体の動向」である。

 中国は国防のためには日本からの技術移転が必要不可欠と考えており、先端技術や防衛関連企業関係者等に技術移転の働きかけを行なっている。

 古くは1976年に発覚した「汪養然事件」(香港で貿易商社を経営していた汪養然が、中国情報機関から中国と貿易取引を継続する見返りとして日本における軍事・産業技術に関する情報収集をするよう指示され、日本人協力者数名を利用しつつ情報活動を実施した)や、1987年の「横田基地 中ソスパイ事件」(在日旧ソ連大使館で工作を受けた中国人と親中団体幹部が、横田基地従業員と軍事評論家らと共に、8年間にわたって在日米空軍の資料を旧ソ連や中国に売却していた)などが有名である。

 近年でも、2004年に在上海日本国総領事館に勤務する領事館員がカラオケ店でハニートラップに引っかかり、総領事館の全館員の出身官庁を教えるよう責められたうえ、情報システムの開示を要求されることを恐れ、自殺した事件が起きている。

 2006年にはこの領事館員と同じカラオケ店でハニートラップに引っかかった海上自衛隊上対馬警備所の自衛官が、内部情報を無断で持ち出したうえ、中国へ無断渡航を繰り返したことで取り調べを受け、1人が自殺した。

 2007年にはイージス艦システムの構造図面が中国の手に渡った(2等海曹の中国籍の妻を出入国管理及び難民認定法違反容疑で調べた際、神奈川県警が押収したハードディスクにイージス艦の情報が発見され発覚。中国籍の妻は国外追放となるも、再度日本に潜伏した)ことで当時の海上幕僚長が辞任したが、自衛隊に対する中国人スパイの工作は“疑惑”を含めればその後も「防衛省情報本部情報漏洩疑惑」(2013年)、「防大生スパイ疑惑」(2014年)など枚挙に遑がない。

 東日本大震災では中国から派遣された救助隊はわずか15名だったのに対し、200名以上の報道記者が訪れた。これは自衛隊の動きを偵察するため派遣されたものと見るのが正しい。

 日本へ送り込むスパイは中国人ビジネスマンや有名人を買収、日中友好を謳う組織のメンバー、貿易をしている日本人やマスコミなどもターゲットとし、機関員が前面に出ることなく、日本人エージェント等を活用するなどの方法で工作活動を展開している。

 また中国の情報収集は中国共産党員が出国する場合、国家安全部から定期的に訪問国で起きた事項についてレポートを提出し、報告することを義務付けられる。後述するが現在、日本国内には5万人もの中国共産党員が滞在していることを考えると、この情報網は脅威以外の何物でもない。

 私は実際にレポートの内容について、共産党員である中国人留学生らに取材したが、皆一様に「大したことは書いていない。いつも適当に書いている」と笑って答えた。だが本人が大したものはない、と考える情報も束になれば話が変わる。たんなる愚痴や自慢話も組織の内情を暴露することであり、中国に付け入らせる隙になる。

 一流企業や一流大学に入る優秀な人材の多くは中国共産党員であることから、たとえ彼らが末端社員であっても、報告する膨大かつ断片的な情報はジグソーパズルのように組み合わせられ、新事実として解明されていく。きわめて非効率ではあるが、情報収集が行なわれていること自体がわれわれにも、そして提供者自身にも認識されにくいという特徴がある。

 本当に意味がなければこのような諜報は廃止するはずで、現在も継続しているのはこの手法が有効であることを示す。

 

在日中国人の動員力

 中国が、在日中国人および帰化した元中国人の組織化を図っているのも見逃せない点である。中国は彼らを「日籍華人(日本国籍中国人)」と呼ぶ。2010年6月には日籍華人聯誼会が組織され、彼らを組織的に運営できる基盤をつくった。

 2004年に尖閣諸島へ中国人活動家が上陸する事件が起きたが、その際には沖縄にいる在日中国人や留学生が海上保安庁の巡視船の動きなどを調べ、裏で手引きしたことが明らかになっている。

 これに加え、中国は同年7月に「国防動員法」を施行した。これは中国国内で有事が発生した場合、「中国国外に住む中国人(帰化人含む)も対象」として動員が発令されることを法令化したものである。先の日籍華人聯誼会の発足時期と照らし合わせれば、その真意を知ることは容易ではないか。

 在日中国人の動員力については、長野オリンピックを思い起こせばよい。

 長野オリンピックでは在日中国人留学生組織「学友会」が2000人規模の留学生を動員すると警察は予測していたが、在日中国大使館によるカネ・モノ、マニュアル配布に及ぶ組織的支援があり、実際は想定を上回る4000人が集結し、中国によるチベット弾圧に抗議する人びとに暴行を加え、警備に混乱を来した。

 中国による動員と暴力、混乱はわれわれ日本人の想定を上回るものであった。

 2015年6月時点で、在日中国人の数は官民合わせ約80万人に及ぶ。これらが一斉に蜂起することがあれば、国内の治安に深刻な影響を与えることは間違いない。

 また中国人の人口約14億人に対し、中国共産党員は約8800万人(2014年末)といわれ、約16人に1人が共産党員となっていることを考えれば、単純計算でも日本国内には5万人の中国共産党員が入国していることになる。

 2013年には、在日中国大使館は公式サイトで在日中国人に対し「緊急事態に備えて連絡先を登録するよう」通知しており、有事に対する備えを着々と進めつつあるのだ。

 転じて北朝鮮の話にはなるが、今年に入ってから急速に核実験や弾道ミサイル発射実験を繰り返す背景に、東大・京大・名大・阪大などで核関連の研究をした在日朝鮮人が大量破壊兵器などへの転用可能な技術を伝えたと見られ、北朝鮮を渡航先とした場合の再入国禁止が決定した(京都大学では現職の准教授が含まれる)。

 日本のヒト・モノ・カネによってつくられた技術が敵性国家に転用され、わが国の安全を脅かす現状を考えれば、再入国不許可は在日朝鮮人全員に適用すべきである。また核やミサイル技術を敵性国家に持ち出す行為は、現行法では逮捕できない。速やかに立法し、厳罰に処する対応を取るべきで、これを中国にも適用することは当然である。

次のページ
政治家から情報が筒抜けに >

Voice 購入

2024年5月号

Voice 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

ついに領海侵犯した中国の「灰色の船」

潮匡人(評論家/拓殖大学客員教授)
×