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拳骨拓史 共産党スパイ五万人の恐怖

2016年11月17日 公開
2022年12月07日 更新

拳骨拓史(作家)

政治家から情報が筒抜けに

 民進党代表選に絡み、蓮舫候補(当時)に二重国籍問題が巻き起こったことは記憶に新しいが、連合の神津里季生会長が「二重国籍の国会議員はほかにもいる」「あまり目くじらを立ててどうこうということではない」と述べたように、国籍法が明確に二重国籍を違法としているのに、マスメディアをはじめこれを擁護する動きが盛んであることに留意したい。

 二重国籍の国会議員については、日本維新の会が日本以外の国籍をもつ人が国会議員や国家公務員になることを禁止するための法案を提出したが、当然ともいえるこの動きに対し、各政党に温度差があるのは不可解である。

 そもそも多重国籍者に被選挙権を与えることは、国と国の利害が衝突する安全保障に携わる場合、“忠誠の衝突”が起こる可能性が高く、外国政府の影響を受けやすくなる危険をはらむ。早期に対応して然るべき問題ではないか。

 民進党の馬淵澄夫選対委員長は、二重国籍状態にある国会議員が「十数人いるようだ」と発言しているが、蓮舫代表の1件は氷山の一角にすぎない。膿はすべて出しきったほうがよい。

 そして二重国籍問題に加え、深刻なのは在日1世議員や外国人秘書の問題である。

 たとえば民進党の某議員は、帰化する前は在日中国人であった。帰化しても日本のためになる政策を推し進めるならばよいが、彼は外国人参政権、ヘイトスピーチ規制法の推進のほか、特定秘密保護法案、安全保障関連法案等には反対するなど、日本の国益を守る政策には断固反対する動きを示している。

 ほかにも落選した民進党の櫛渕万里前議員の夫は李松という中国人であるが、元刑事である坂東忠信氏によると、「日本人配偶者後援会」という中国人女性の日本での不法滞在を指南する団体を運営していたという。

 さらに坂東氏は、李松氏が中国の民主化運動家であるのに、妻の櫛渕議員が2009年の小沢一郎議員による中国への訪問団に参加できたことを疑問視し、李松氏が中国の反政府活動家の仮面をかぶった中国のスパイである可能性を指摘している。

 また第18回統一地方選挙では、選挙が始まるわずか2カ月前に帰化した李小牧氏が新宿区議選に立候補(その後、落選)するなどの動きもあり、地方分権や外国人参政権が叫ばれる昨今の情勢を考えれば、国政同様に地方の動向についても目を配る必要がある。

 国会議員や地方議員は国政調査権・行政調査権があり、国や地方の機密資料を閲覧できる立場にある。日本の安全と平和を守るためには、二重国籍議員の禁止だけでなく、帰化1世、またはその配偶者が外国人である場合には立候補を禁止するとともに、外国人秘書の登用についても、中国や北朝鮮・韓国のようにわが国と価値観を共有しない国については同様に制限すべきだと考える。

 アメリカでは帰化すれば1世でも選挙権、被選挙権を得ることができるが、大統領選に出馬することはできない。日本のように有権者数が多くはなく、内閣総理大臣の選出がアメリカの大統領選のような直接選挙で行なわれているわけではないことを考慮すれば、これらに制限を掛けるのは当然だといえるのではないか。

 むろん、これは二重国籍、帰化1世等だけに限定される話ではない。

 かつて橋本龍太郎元首相が中国人女性工作員のハニートラップに引っかかったことは有名だ。この2人の出会いは、1970年代に在日中国大使館に勤務していた女性工作員がホテルニューオータニのロビーにいた橋本の前で白いハンドバッグを落とし、それを拾ってもらったことから始まった。

 以後、逢瀬を重ね、政府の実権を握った橋本氏を使って北京市の病院への資金援助と天安門事件で凍結されていたODA(政府開発援助)26億円の支援に成功している。「1人の優秀なスパイは一個師団に匹敵する」との言葉を彷彿とさせる出来事だといえるだろう。

 官公庁の防諜(カウンターインテリジェンス)を高めても、政治家から情報が筒抜けになるのであれば何の意味もない。スパイ防止法の早期制定と国会議員、有権者の良識が求められることはいうまでもない。

 

MI6構想より防諜が急務

 中国では2015年5月から在中邦人をスパイ容疑で逮捕、起訴する事件が相次いでいる。

 拘束された人物は、中朝国境地帯で個人貿易をしながら北朝鮮情勢の情報を収集していた男性や、浙江省で人材派遣業を営む男性(人材派遣はヒト・モノ・カネを扱うため、情報を得やすい)、中国と35年にわたる付き合いがあり、中国人観光客誘致や技術指導をしていた人物(親中派のように振る舞っていたが、日本の二重スパイ)など多岐にわたる。

 いずれにせよ、これだけの数の情報協力者が一斉に逮捕されるというのは、日本側の情報が中国へ筒抜けになっている可能性が高い。むろん、これまでも中国で捕まった事例はあるが、裏で該当日本人を国外追放するなどで済ませてきた。

 私がこの事件から想起するのは、日経新聞記者北朝鮮拘束事件である。

 この事件は、1999年に日経新聞記者(当時)杉嶋岑氏が北朝鮮にスパイ容疑で拘束された事件である。

 帰国後、杉嶋氏は日本の公安調査庁(以下、公安)に協力して提供した資料がことごとく北朝鮮当局の手に渡っていたうえ(公安に北朝鮮の二重スパイがいる可能性)、日本に協力した民間人が拘束された際に、政府がトカゲの尻尾切りのように「知らぬ、存ぜぬ」で乗り切ろうとした姿勢を厳しく批判している。

 日本では内閣情報調査室、公安、警察庁、外務省、防衛省などさまざまな機関が独自で情報を入手しているが、今回、中国に逮捕された日本人はいずれも公安の協力者と見られることから、かつての杉嶋氏の事件と同じ事が起きているのではないだろうか。

 2013年には、朱建栄東洋学園大学教授が日本との二重スパイの容疑で中国で逮捕されたが、その際、公安を含めたわが国の情報機関関係者との接触について厳しく取り調べられたという。この動きを見ても、わが国の動きが筒抜けになっている可能性は高い。

 早期に情報漏洩の原因を調査し、責任者を処分しなければ、このままでは身の危険を感じ、日本のために情報提供をしようとする者は現れないであろう。

 現在、安倍内閣の下で日本版MI6構想が持ち上がっている。だが、それよりも急務なのは防諜であり、国内に潜むスパイおよび二重スパイを排除するための法整備と体制づくりであり、事態が発覚した際に日本政府への情報提供者を安全に保護するための仕組みをつくることではなかろうか。

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