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日本を大戦に追い込んだコミンテルンの謀略

2017年08月07日 公開
2019年08月07日 更新

江崎道朗(評論家)

レーニン
 

コミンテルンのスパイ工作に振り回された戦前の日本

アメリカでは、今、近現代史の見直しが起こっている。

1995年、アメリカ政府は戦時中から戦後にかけての、在米ソ連(ソヴィエト連邦)のスパイの交信記録を解読した「ヴェノナ文書」を公開した。

これが契機となって、戦前、日本を追いつめたアメリカのフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト民主党政権の内部にソ連のスパイたちが潜み、ソ連に有利となるようにアメリカの外交政策を歪めてきたことが明らかになりつつある。

先の大戦とその後の東西冷戦を振り返ったとき、「20世紀は、ソ連、特にコミンテルンのスパイたちとの戦争であった」という歴史観が浮上してきているのだ。この歴史観に立って、アメリカの保守派は、「ルーズヴェルト民主党政権とコミンテルンの戦争責任を追及する」視点で、近現代史の見直しを進めている。この点については拙著『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』に書いたので、関心のある方はご一読願いたい。

アメリカのルーズヴェルト民主党政権の内部に、ソ連・コミンテルンのスパイたちが潜り込み、外交政策に多大な影響を及ぼしていた。そして実はアメリカだけでなく、イギリスでも、フランスでも、カナダでも、ソ連・コミンテルンのスパイたちが政権内部に潜り込み、政策に影響を与えていたこともまた、明らかになりつつある。

それでは、戦前の日本はどうだったのか。

日本だけが、ソ連・コミンテルンのスパイ工作に引っかからなかったはずがない。

残念ながら、日本もまた、ソ連・コミンテルンのスパイ工作に振り回されていた。

にもかかわらず、日本では、「ソ連・コミンテルンのスパイ工作が戦前・戦中の外交政策にどのような影響を与えたのか。そして、そのようなスパイ工作に振り回されたとしたら、それは何故なのか」といった観点から近現代史を見直そうとする動きは、京都大学の中西輝政名誉教授らによって生まれつつあるものの、必ずしも大きくなっていない。

実は近衛文麿政権とその後の東條英機政権の戦争指導が「戦争から社会主義革命へ」というソ連の対日工作によって影響されているのではないかとして、当時、近衛・東條政権の政策を批判していたグループがいた。

その中心人物の一人が、幕末の志士、吉田松陰の妹婿の曾孫、当時東京帝国大学の学生だった小田村寅二郎だ。

この小田村とその仲間たちの多くは戦後、大学教授となり、いわゆる「日本が悪かった」という東京裁判史観を批判しつつも、同時に近衛・東條政権がいかに問題があったのかを縷々、訴えていた。その一人、小柳陽太郎・九州造形短期大学教授から学生時代、指導を受けていた私もまた、「東京裁判史観は間違いだが、同時に近衛・東條内閣にも問題があった」とする見方を持つようになった。

そのような視点に基づいてこの30年間、近現代史の研究を進め、途中から中西輝政教授たちの研究会に参加するようになった。特に近衛・東條政権の内部で暗躍していたソ連のスパイたちとその影響について調べた結果、日本もまた、いかにソ連・コミンテルンの工作に振り回されていたかが明確に見えてくるようになった。

これから述べることを、額面通り信用しろとはいわない。だが、決して謀略論などで片づけないでほしい。外国によるスパイ工作は現在も世界中で行なわれており、日本もまたその例外ではない。

日本が再び失敗を繰り返さないためには、見たくない過去も直視するべきなのだ。

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