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「あなたは愛国心をもっていますか?」――ケント・ギルバートが日本人に問う

2017年08月10日 公開
2023年02月01日 更新

ケント・ギルバート(米カリフォルニア州弁護士)



 

愛国心と日本人

Q:「あなたは日本人に生まれて良かったと思いますか?」
A:「はい」
Q:「日本という国が好きですか?」
A:「はい」
Q:「ということは、日本に愛国心を持っているのですね?」
A:「う〜ん、愛国心ですか……」

日本人に「愛国心」について街頭インタビューをしたら、このようなやりとりが続出するのではないでしょうか。100パーセントの確信をもって断言しますが、現代の日本人は「愛国心」という言葉に対して、何かしらの抵抗感を持っています。

読者の中に、子供時代から現在に至るまで、「私は愛国心を持っています」と言い続けた日本人が何人いるでしょう。戦後生まれであれば、よほど愛国心の強い両親に育てられ、学校の教師や友人など、環境にも恵まれた人でないかぎり難しいと思います。ほとんど全滅に近いのではないでしょうか。

ちなみに一般的な家庭で健全に育った米国人であれば、「あなたは米国に愛国心を持っていますか?」という質問に対して、ほぼ全員が、「はい。私は子供時代からずっと、米国に愛国心を持っています」と即答するはずです。

幸い私も、そのような極めて一般的な考えを持つ米国人の一人です。だから日本人の愛国心への抵抗感を見ると、とても奇異に映るのです。「愛国心」という言葉を使うのは後ろめたく、カッコ悪いことだと思っている日本人は、世界に出かけた場合には、逆にバカにされたり、大恥をかいたりしてしまうかもしれません。

世界のほとんどの国では、自然に愛国心を表明することが、ごく当たり前だからです。

むしろ、「愛国心はありません」などと平気で答える人のほうが、多くの場合、世界中で奇異な目で見られて、信頼を失ってしまうことを、日本の皆さんは知っておくべきです。

そういわれても、日本の皆さんはピンとこないかもしれません。なにしろ、「愛国心」という言葉に日本人が知らず知らずのうちに抱かされてしまった拒否感について、あまりにも無自覚なうえに、その原因が根深いものですから――。

では、次のような例に置き換えてみたらどうでしょうか。

誰かに「あなたは家族を愛していますか」と聞いたとしましょう。返ってきた答えが「いやー、うちは先祖代々、酷い歴史を歩んできた一族でしてね。とても誇れるようなものではないですし、そんな暗い過去を持つ家族を愛しているだなんて、口が裂けてもいえませんよ」というものだったら、皆さんはどう思うでしょうか。

「自分の家族やご先祖様について悪しざまにいうなんて、本当にこの人は大丈夫なのかな? 信用していいのかな?」と、心のどこかで思いませんか?

正直にいえば、日本人が「自分たちには愛国心はありません」と発言するのを聞いた外国人の多くは、今、述べた家族の例と同じような「この人たちは本当に信頼できるのかな?」という違和感を抱くと思います。そのくらい非常識な発言なのです。

日本以外の多くの国の人々にとって、「愛国心」は「家族を愛する心」と同じくらい、ごく自然なものです。だから、「私には愛国心がない」「国のことなんかどうでもいい」などといわれると、むしろ眉をひそめたくなるのです。

そういう風にいうと、「いや、もちろん私だって日本のことは好きなのですが……」とおっしゃる日本人は多いと思います。

そうおっしゃる方には、重ねて聞きたい。では、「日本を好き」なのと「祖国を愛している」との違いは何ですか?

これは、かなり難しい質問かもしれません。

それに対する一つの答えは「マインドコントロール」です。

いきなり結論めいた話になりますが、戦後の日本では、日本人が愛国心を持つことに抵抗感や罪悪感を抱かせるような学校教育と、マスコミによる報道や放送が、意図的に行なわれてきました。そして、それは現在進行形で、今、この瞬間にも行なわれています。はっきりいえば、皆さんは一種の洗脳を受け続けているのです。

「マスコミや教育を通じて日本人を洗脳しているだなんて、そんなバカな!」

と考えたあなたは、残念ながら見事にマインドコントロールされてしまった人です。オウム真理教の事件を引きあいに出すまでもなく、洗脳された人は、自分が洗脳されている事実になかなか気がつきません。あるいは、うすうす気づいていても、なかなかその事実を認めようとはしません。長年かけて築いた価値観が、根底から覆ってしまいますからね。

戦後、この洗脳を教育機関やマスコミを操って行なわせた陰の主犯は、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)でした。米国政府が仕組んだといっても構いません。要するに私の祖国であるアメリカ合衆国の占領政策によるものであり、謀略です。

この謀略は「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)」と名づけられています。簡単にいえば、先の戦争についての罪悪感や嫌悪感を日本人の心に植えつけて、日本を二度と軍事的に立ち上がれない国にしようというものでした。米国政府がそこまでのことを行なった原因は、日本や日本人のことを米国が極端に恐れたせいなのですが、この件は本書『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』で詳しく述べています。

日本を「好き」であっても「愛国心」という言葉をなかなかいえない原因のもう一つは、「日本人が日本のことを知らない」ことにあります。

誰も「知らないもの」を愛することはできません。その点でいうと、明らかに日本人は日本のことを「十分には」知らないように思えてなりません。

これも世界での話で恐縮ですが、何カ国かの人々が集まるパーティーのような席では、まずはたいてい、各々の国の「お国自慢」になるものです。皆が、それぞれ自国の文化や伝統、歴史について語ったり、相手の国のことについて質問したりするのですが、その場で自国の歴史や文化を語れない人は「無教養な人」と思われてしまいます。

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