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松原仁 政治を人工知能に委ねる可能性

2017年11月28日 公開

松原仁(公立はこだて未来大学教授・副理事長)

聞き手:編集部

 

AIは神に近づくか

 ――人間の仕事が人工知能(AI)に奪われる、といった「AI脅威論」が昨今よくいわれますね。

 松原 AIに仕事が奪われるのではなく代替してくれる、と私は考えています。労働人口が減るなかで生産性を確保するための1つの選択肢として、AIは有効だと思います。単純な事務作業などはAIに任せて、空いた時間をプライベートの活動に充てることもできます。

 ただ、AIが生産性を発揮した際の収入を誰が得るのか、という問題はあります。AIを開発、もしくは所有している会社に利益が配分されるとすると、税金は誰が支払うのか。所得税や法人税があるように、「AI税」という概念が生まれるかもしれない。現在は想定していない税制や法整備については、事前に考えておく必要があるでしょう。

 ――さらに、AIが人間の知能レベルを超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年に起こる、といわれています。

 松原 いわゆる「2045年問題」ですね。私は、2045年にシンギュラリティが到来した途端、AIと人間の能力が逆転するのではなく、人間がAIに徐々に意思決定を委ねていくのだろうと思います。実際に今日、スマートフォンのアプリに頼っている人は多く、無意識のうちにAIは日々の生活をサポートする存在になっています。

 ――なるほど。AIの技術が進歩することによる危険性はありますか。

 松原 開発者の意に反して、AIを悪用する人が出てくることは考えられます。たとえば何者かが、あるソフトから得られる情報を特定の政治信条に誘導されるよう仕組んだとします。すると、知らず知らずのうちに情報の刷り込みが行なわれ、気付いたときには偏った思想に染まってしまうのです。

 ただ私は、AIの危険性を心配する意見は理解する半面、AIを育てていくことで人間と共存できる、と考えています。人間の子どもも最初は何もわからなくても、教育することで次第に知識や道徳を学んでいきます。それに、人間の場合は1人ひとりの個性に応じて育てる必要がある一方、極端にいうとAIは、1つ賢いものをつくればあとはコピーすればいい。AIはうまく育てれば、人間をサポートしてくれる利口なパートナーになる。そう割り切って付き合っていくべきではないでしょうか。

 ――最終的に、AIはどこまで進化していくでしょうか。

 松原 最近少し話が出始めているのは、政治における意思決定をAIに委ねる研究です。いきなり政治家がAIに取って代わるということではなく、今後、AIが政治システムの中枢に介入する可能性は十分考えられます。

 世界を見渡すと、下手な民主主義よりもむしろ独裁者によって秩序が保たれている側面もあります。私はこうした国々の政治体制を見て、独裁者はAIに近い存在なのではないか、と思うようになりました。両者とも絶対的な存在であり、ある意味〝しがらみのない〟意思決定ができるからです。人間はどうしても特定の利害関係に縛られてしまうため、予断や偏見をもたずに行動するのは難しい。一方、AIなら客観的な判断を下し、最大多数の最大幸福の実現も夢ではないかもしれない。

 ――政治までAIとは、すごい時代になりました。

 松原 民主主義との兼ね合いでいうと、たとえば国民の意見を汲み取る手段としてAIを活用できるわけです。それこそインターネットを介して世界中の人びとの意見を分析することも可能です。世界の幸福を考えたときに、戦争ほど野蛮な手法はありません。AIを政治に活用すれば、人を殺さずに戦争をやめさせるという、人類最大の課題を解決する一助になるでしょう。極端なことをあえていえば、星新一さんの小説にあるように、進歩したAIは神のような存在に近づくのかもしれません。

(本記事は『Voice』2017年12月号、松原仁氏の「AIは神に近づくか」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の12月号をご覧ください)

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著者紹介

松原 仁(まつばら・ひとし)

公立はこだて未来大学教授・副理事長

1959年、東京都生まれ。東京大学理学部情報科学科卒業。86年、同大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。通産省工業技術院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)を経て、2000年より現職。14年6月から16年6月まで、人工知能学会会長を務める。専門は人工知能、ゲーム情報学。著書に『鉄腕アトムは実現できるか?』(河出書房新社)など。

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