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羽生善治竜王が語る藤井聡太五段との対局への意気込み、平常心を保つコツとは

2018年02月17日 公開

羽生善治(将棋棋士、竜王・棋聖)

一過性のブームで終わらせない

 ――昨年は加藤一二三九段の引退や藤井聡太四段(肩書きはいずれも当時)の連勝記録など、将棋界全体が大いに話題になった年でした。加藤九段の愛称である「ひふみん」が、「2017 ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)のトップテン入りを果たしたのは象徴的かもしれません。

 羽生 そうですね。加藤先生は将棋界のみならず幅広い分野で活躍されており、「ひふみん」の愛称も国民の皆さんに広く浸透しています。藤井さんはプロデビューしてからまだ1年ほどですが、これまでさまざまなメディアで取り上げられてきました。私は対局や講演会などで地方に行くことも多いのですが、これまで将棋をまったく知らない人たちにも、広く認知されるようになってきたと感じます。この機会を一過性のブームに終わらせるのではなく、地に足を着けた活動に繋げていくことが大事です。

 ――2月17日には、朝日杯将棋オープン戦本戦準決勝で藤井聡太氏との公式戦初対局が実現します。

 羽生 藤井さんとの公式戦がこんなに早く実現するとは思っていませんでした。彼の将棋は攻守のバランスが取れており、すでにかなり完成されています。今後も力をつけるであろう藤井さんとの対局はとても楽しみです。

 

勝っても負けても平常心

 ――羽生竜王の通算獲得タイトル数は現在99期で、通算勝利数は1394(2018年2月16日対局分まで)。タイトル100期の大台、そして大山康晴15世名人がもつ歴代最多通算1433勝の記録更新が迫っています。このような記録については、やはり意識されますか。

 羽生 100期のタイトル獲得数についてはよく報道されることもあるせいか、やはり気になりますね。ただ、通算の勝ち星については最初の100勝くらいまでは覚えていたものの、さすがにこの年数になるとあまり覚えていなくて(笑)。一局一局の対局に打ち込んでいくなかで、結果として記録が付いてくる、というのがベストです。何となく経験則からも、記録を意識しすぎるのはよくないとわかっており、対局にはできるだけ自然体で臨むようにしています。

 ――将棋に限らず勝負事では、勝ちが見えてくるとどうしても〝欲〟が出てくるといわれます。そこをぐっと抑えて平常心で、というのはなかなか難しいと思うのですが。

 羽生 それは本当に難しいことです。平常心をずっと保ち続けていくのは、将棋を何十年続けていても簡単なことではありません。とくに将棋は最後の最後までどう決着するかわからない逆転の多いゲームですから、「勝負は下駄を履くまでわからない」と肝に銘じていつも対局しています。

 ――羽生竜王の強みは、「一度対局に敗れても負けが続かない」「タイトルを失っても再び取り返せる」という点にあるといわれます。たとえば、ミスをして負けてしまったときは精神的にも落ち込むと思いますが、どうやって気持ちを切り替えているのでしょうか。

 羽生 対局が終わったらその日のうちに反省、検証、総括してしっかり眠り、次の対局に向かうというプロセスを取っています。負けたからといって何か特別なことをするというよりも、普段どおりに過ごして心をリセットするんです。

 これは対局に勝ったときも同様です。つねにまっさらな気持ちを保ち、前の対局のイメージを残さないことが重要です。若いときのほうが記憶を引きずりやすいので、むしろ年齢が上がってくると気持ちの切り替えはしやすくなってくると思います。

 ――心をリセットするために、何か特別なリフレッシュ法はありますか。

 羽生 散歩やスポーツ、あるいはお茶を飲むでも何でもいいので、将棋とはまったく違うことをしてリフレッシュしています。将棋の研究ばかりしてインプットを増やしていくと、思考が膠着してしまう。だから頭を整理してリセットすることが必要なんです。一見すると将棋とは関係のないことをきっかけに、自らの考えがまとまったり、新しいアイデアが閃いたりすることもあるでしょう。

(本記事は『Voice』2018年3月号、羽生善治氏の「若手棋士との真っ向勝負」を一部、抜粋したものです。全文は現在発売中の3月号をご覧ください)

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著者紹介

羽生善治(はぶ・よしはる)

将棋棋士

1970年、埼玉県生まれ。二上達也九段門下。85年、中学3年生のときにプロ入り。89年、19歳で初のタイトル竜王を獲得。96年、史上初のタイトル7冠(名人・竜王・棋聖・王位・王座・棋王・王将)を果たす。2017年、永世7冠を達成。18年、国民栄誉賞受賞。著書に、『決断力』『大局観』(以上、角川書店)、『直感力』『捨てる力』(以上、PHP研究所)など。

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