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田中道昭 「中国ブランド」が日米欧メーカーを超える日

2018年04月20日 公開

田中道昭(立教大学ビジネススクール教授)

FMCが披露した新EVブランド「BYTON」(CES2018で筆者撮影)


 筆者も参加した1月の米CES2018においては、新EVブランド「BYTON」を披露した中国資本のEVメーカーであるFMC(フューチャー・モビリティ)が注目を集めた。音声AIアシスタントであるアマゾン・アレクサを標準搭載し、音声のみならず手のしぐさだけで車内の操作が可能な優れたインターフェイス、レベル3の自動運転設備の搭載、顔認証システムによる運転手の識別、運転者の健康状態管理などの機能面に加えて、車体の外観や内装の優れたデザイン、さらにはブース全体や動画等でのブランディングも高い評価を受けた。

 独BMWと日産自動車の元幹部が立ち上げたとはいえ、「中国メーカーなのにブランディングに優れている」「中国資本のブランディングもここまできた」「もはや中国資本は自動車産業においても侮れない」と脅威とともに評価されたのだ。

 BYTONは、開発・製造は中国、スマートカー部分のソフトウエアは米国、車体デザインは独と、「中米独」3カ国にまたがっての水平分業という意味でも2016年に起業したばかりの新規メーカーとしては画期的だ。2019年には中国で量産化、2020年には米国や欧州にも新ブランド車を投入する計画である。価格は米ドルで4万5000ドル程度を想定しているという。

 中国でEV車メーカーが乱立する一方、中国政府では同メーカーを20社程度に絞り込む方針を明らかにしている。独メーカーでもEV車のライセンス認可を取得するのに苦労しており、独政府とともに主要メーカーが水面下での工作を進めているとも伝えられている。中国政府は、中国資本の完成車メーカーを手厚く保護し、次世代自動車産業での競争を優位に進めたい意向のようだ。なお、先のBYTONもまだ同認可が取得できていない状況であり、同ライセンス取得の基準はきわめて不透明だ。

 EV完成車メーカーが乱立しているのとは裏腹に、中国では、2014年に中国南車と中国北車が合併して世界最大の鉄道車両メーカーが誕生したように、最大手クラス三社が合併し世界最大級の自動車メーカーが誕生する可能性も囁かれている。国内同業同士の競争による資源の浪費を避け、国際化を加速することを狙いとした鉄道車両メーカーの合併では、実際に経営統合後は「オールチャイナ」として東南アジアや南米などで日米欧大手との受注競争に挑んでいる。

 規模の経済による競争力強化で世界進出というのは、すでに同業界で実現済みなのだ。EV化、自動運転化、スマート化などへの対応により、次世代自動車産業の開発コストは従来比、桁違いなものになっている。とくに車載OSから、ハードとしてのクルマ、ソフトとしてのサービスまで一気通貫で覇権を握ろうと思ったら国内で消耗戦をしている場合でないのは明白だ。

 中国では、従来、国営自動車メーカーと外国メーカーと合弁企業を組ませることで海外のノウハウを吸収、技術力を高めてきた。近年はBYDなどの独立系メーカーも国内で存在感を増しており、とくにEV車に重点をシフトしてからは外国メーカーとも競合する位置を確保しつつある。

(本記事は、4月10日発売の『Voice』2018年5月号、田中道昭氏の「次世代自動車産業の覇権を狙う中国」を一部、抜粋したものです。本稿を含む『2022年の「自動車産業」―異業種戦争の攻防と日本の活路(仮題)』が、PHPビジネス新書から5月中旬に刊行予定です)

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著者紹介

田中道昭(たなか・みちあき)

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授

シカゴ大学ビジネススクールMBA。戦略論を専門として、経営を中核に政治・経済・社会・技術の戦略を分析する「戦略分析コンサルタント」でもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長などを歴任。現在、株式会社マージングポイント代表取締役社長。著書に、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)など。『2022年の「自動車産業」―異業種戦争の攻防と日本の活路(仮題)』(PHPビジネス新書)が5月中旬に発売予定。

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