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村田晃嗣&三浦瑠麗 トランプは米国の鳩山由紀夫か

2018年05月11日 公開

村田晃嗣(同志社大学教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

気鋭の国際政治学者同士が米朝首脳会談について大激論

※対談は4月上旬に行なわれた(撮影:吉田和本)

 村田 現在は米朝が互いに対話の姿勢を見せていますが、そもそも米朝会談は開かれるのか、という疑問があります。開催場所など基本的なことで折り合わない可能性もあるし、開かれても決別するだけ、という見方もある。可能性として高いのは、会談は開催されたけれども中身のない合意を結び、それがあたかも意義のあるものであるように米朝がお互いに言い張って、時間だけが費やされていくシナリオです。

 北朝鮮にしてみれば11月のアメリカ中間選挙以降、トランプ大統領が朝鮮半島問題への関心を失うことを期待している。当面、宥和的なムードを演出して凌ぎたいのでしょう。

 北朝鮮に対する経済制裁が効いていない、という説もありますが、たとえ経済制裁そのものに効果がなくても、「北朝鮮は経済制裁国」という国際社会に与えるネガティブイメージの醸成に意味があるともいえます。完全かつ不可逆的な核放棄を迫るか、北の核保有を認めて共存するかという二者択一ではなく、どの程度のタイムスパンで落とし所を探れるかを議論すべきです。

 三浦 オール・オア・ナッシングを求める日本の感情論もまた危険である、ということですね。国連で北朝鮮制裁の実務に当たった古川勝久さんがいうように、経済制裁や六者協議は失敗だったと断定するだけではなく、北の兵器開発を遅らせる効果や、協議による対北抑制で稼げた「年数」も考慮に入れるべきでしょう。

 村田 日本の頭越しに米朝が対話に乗り出しているとはいえ、安倍総理がトランプ大統領と緊密な関係を築くことは、依然としてアジアの安全保障にとって重要です。その意味で、4月の日米首脳会談は十分に合格点でした。北朝鮮は核実験場の閉鎖やミサイル実験の中止など、平和攻勢を掛けてきていますが、それらの十分な検証と日米の意思疎通が必要です。

 三浦 そうですね。しかも北朝鮮が現在保有している核弾頭やミサイルの廃棄にコミットした形跡はうかがえません。日米首脳会談では北朝鮮との交渉について緊密な相談が行なわれました。

 そもそも、米朝首脳会談が電撃的に決定したことで、日本が取るべき行動は変わったと思います。韓国の文在寅大統領は、政権に就く前から南北対話を周到に準備していたようです。韓国が平昌五輪を利用して北に平和交渉を持ち掛け、アメリカもあっさりと宥和路線に乗ってしまったいま、日本としてはむしろ「完全かつ検証可能な核放棄でないと認めない」というぶれない立場を示すほうがよいと思います。宥和勢力とバランスを取るためにも。

 日本と同じく北朝鮮問題で蚊帳の外だった中国が、ここへ来て主導権を取り戻してきました。日本だけがバスに乗り遅れているようにも見えますが、それはよく考えていない意見です。下手をすれば日本だけが意固地に和平に反対しているかのような悪印象を国民が抱きかねない懸念はありますが、日本はあくまでも非核化や軍縮の基準点を示し続けるという大事な仕事があります。東アジア地域に、北朝鮮の不道徳な体制や極端な軍拡に異議を唱え続ける国がいることも必要なのですから。

 村田 おっしゃるように、日本はいまの段階では経済制裁の継続、最終目標は完全不可逆で検証可能な非核化という主張を堅持すべきです。日本が北朝鮮に妥協してしまうと、全体の平均点がどんどん下がってしまう。日本ができるだけ踏みとどまることが東アジア地域の安定に寄与する、という自覚が必要です。南北会談や米朝会談にしても、今後どう転ぶかわからないのですから、いたずらに現状の宥和ムードに流されてはいけない。決して慌てることなく、当初の目標を見失わないことです。

米朝接近でにわかに浮上した「日本孤立論」 >

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著者紹介

村田晃嗣(むらた・こうじ)

同志社大学法学部教授

1964年、兵庫県生まれ。同志社大学法学部卒業。98年、神戸大学博士(政治学)。99年、『大統領の挫折』(有斐閣、1998年)でサントリー学芸賞、2000年、『戦後日本外交史』(共著、有斐閣、1999年)で吉田茂賞を受賞。13年4月から16年3月まで同志社大学学長を歴任し、現職。著書に『レーガン』(中公新書、2011年)など。


三浦瑠麗(みうら・るり)

国際政治学者

1980年、神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。同公共政策大学院修了、同法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、比較政治学、政軍関係理論。2016年より、東京大学政策ビジョン研究センター講師。青山学院大学兼任講師。著書に、『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)など。

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