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気鋭の国際政治学者同士が激論!真のリアリズムに基づく国防とは何か

2018年06月01日 公開

村田晃嗣(同志社大学教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

「愛国心」より予算を考えよ


写真:吉田和本

6月12日に開催される見込みの米朝首脳会談については、「トランプは米国の鳩山由紀夫か」において、両氏の白熱した議論が行なわれた。では、日本はいかなる安全保障政策をとり、国の根幹たる憲法にどう向き合えばいいのか。核武装、シビリアンコントロール、憲法9条まで余すところなく語る。


村田 従来まで日米同盟は、朝鮮半島問題や台湾問題などの地域リスクが多い東アジアにおいて、数少ない定数でした。ところが、今後は日米同盟すら変数になるかもしれない。いまや連立方程式でも容易に解法が導き出せないほど、東アジアの国際政治は流動化しています。

情勢が複雑化する状況下では、日本が行使できる政策のレパートリーは多いほうがよい。核武装や敵基地攻撃能力を保有するところまで議論を届かせるかは別にして、もっと政策の幅を広げることに資する議論に取り組むべきでしょう。

三浦 私は以前から、日米による核共有(ニュークリア・シェアリング)を提唱しています。それは、アメリカから日本に持ち込む核については意思決定を共有しようというものです。今後、北朝鮮の核の脅威は依然として残るでしょう。中国の軍事的脅威はさらに本質的です。

だからこそ、日本としては同盟の信頼性を高めるために、非核3原則「持たず」「つくらず」「持ち込ませず」のうち「持ち込ませず」を外し2原則とし、有事の際は、日米共同の意思決定で核について扱う必要があります。

上の世代の方々は、非核3原則は決して変えられない根強いものだといわれます。しかし中長期的な日米関係と日本の平和を考えたとき、問題から目を背けては、かえって日本の孤立主義や冒険主義を促進するでしょう。

いまトランプ政権は「核態勢の見直し(NPR)」を掲げており、今後は戦術核(射程距離が短い通常兵器の延長線上の核)にシフトして多額の予算を投じていきます。また、宇宙空間の軍事利用で中国に競り負けているアメリカは本格的に宇宙開発に梃入れをし、サイバー技術を磨き、AI(人工知能)搭載のロボット兵器の開発など、新産業分野にさらに投資を増やすでしょう。

仮にアメリカの通常兵器が削減され、軍事における自動化と情報化が進んでいくと、東アジアにおけるアメリカのプレゼンスは軽減していくでしょう。その分を日本が補填し、自国防衛の比重を高めていく必要があります。米軍基地の縮小をも睨み、核抑止力の選択肢を排除すべきでないと思います。

村田 予算についていえば、第2次安倍政権以降は防衛予算が増えているとはいえ、現在は5兆2000億円程度。米軍再編に掛かる経費を差し引くと4兆数千億円で、ようやく20年ほど前の規模に戻ったレベルです。NATO(北大西洋条約機構)諸国には、GDPの2%を国防費として支出する公約があります。

ヨーロッパより日本のほうがよほど厳しい安全保障環境にあるにもかかわらず、GDP比1%ほどの防衛費ではとても足りません。このままでは自衛隊に殉死者が出かねない。防衛費の拡充は急務です。

ちなみに、海上保安庁の年間予算は約2100億円で、東京大学の年間予算と同程度なんです。国立大学1つと同じ予算で、日本全国6000以上もの島々に至るまで安全を確保するといっても無理があります。

あえていうなら、いくら愛国心があったところで、お金がなければ国は守れない。防衛費の話を抜きにした愛国論はナンセンスです。威勢のいい排他的国防論を唱えるだけではなく、厳格な数字とタイムスケジュールに裏打ちされた個別・具体的な安全保障の話をすべきです。一時的にスカッと溜飲を下げるだけの「清涼飲料水の国防論」から日本は卒業しなければならない。

三浦 そうなんです。自衛隊員の処遇は改善の余地があるし、人員も定員を満たすべきでしょう。自衛官の「働き方改革」を推進する一方で、米軍と同じく自動化への投資も進める必要があります。憲法改正の議論にしても、一度改正したら終わりではありません。その後の自衛隊の運用をめぐる実務的話し合いこそ重要で、現実の運用を現場レベルで詰めていく必要があります。

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著者紹介

村田晃嗣(むらた・こうじ)

同志社大学法学部教授

1964年、兵庫県生まれ。同志社大学法学部卒業。98年、神戸大学博士(政治学)。99年、『大統領の挫折』(有斐閣、1998年)でサントリー学芸賞、2000年、『戦後日本外交史』(共著、有斐閣、1999年)で吉田茂賞を受賞。13年4月から16年3月まで同志社大学学長を歴任し、現職。著書に『レーガン』(中公新書、2011年)など。


三浦瑠麗(みうら・るり)

国際政治学者

1980年、神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。同公共政策大学院修了、同法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、比較政治学、政軍関係理論。2016年より、東京大学政策ビジョン研究センター講師。青山学院大学兼任講師。著書に、『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)など。

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