ホーム » Voice » 政治・外交 » 気鋭の国際政治学者同士が激論!真のリアリズムに基づく国防とは何か

気鋭の国際政治学者同士が激論!真のリアリズムに基づく国防とは何か

2018年06月01日 公開

村田晃嗣(同志社大学教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

「愛国心」より予算を考えよ

村田 予算についていえば、第2次安倍政権以降は防衛予算が増えているとはいえ、現在は5兆2000億円程度。米軍再編に掛かる経費を差し引くと4兆数千億円で、ようやく20年ほど前の規模に戻ったレベルです。NATO(北大西洋条約機構)諸国には、GDPの2%を国防費として支出する公約があります。

ヨーロッパより日本のほうがよほど厳しい安全保障環境にあるにもかかわらず、GDP比1%ほどの防衛費ではとても足りません。このままでは自衛隊に殉死者が出かねない。防衛費の拡充は急務です。

ちなみに、海上保安庁の年間予算は約2100億円で、東京大学の年間予算と同程度なんです。国立大学1つと同じ予算で、日本全国6000以上もの島々に至るまで安全を確保するといっても無理があります。

あえていうなら、いくら愛国心があったところで、お金がなければ国は守れない。防衛費の話を抜きにした愛国論はナンセンスです。

威勢のいい排他的国防論を唱えるだけではなく、厳格な数字とタイムスケジュールに裏打ちされた個別・具体的な安全保障の話をすべきです。一時的にスカッと溜飲を下げるだけの「清涼飲料水の国防論」から日本は卒業しなければならない。

三浦 そうなんです。自衛隊員の処遇は改善の余地があるし、人員も定員を満たすべきでしょう。自衛官の「働き方改革」を推進する一方で、米軍と同じく自動化への投資も進める必要があります。

憲法改正の議論にしても、一度改正したら終わりではありません。その後の自衛隊の運用をめぐる実務的話し合いこそ重要で、現実の運用を現場レベルで詰めていく必要があります。

次のページ
プラグマティックな加憲案 >



著者紹介

村田晃嗣(むらた・こうじ)

同志社大学法学部教授

1964年、兵庫県生まれ。同志社大学法学部卒業。98年、神戸大学博士(政治学)。99年、『大統領の挫折』(有斐閣、1998年)でサントリー学芸賞、2000年、『戦後日本外交史』(共著、有斐閣、1999年)で吉田茂賞を受賞。13年4月から16年3月まで同志社大学学長を歴任し、現職。著書に『レーガン』(中公新書、2011年)など。


三浦瑠麗(みうら・るり)

国際政治学者

1980年、神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。同公共政策大学院修了、同法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、比較政治学、政軍関係理論。2016年より、東京大学政策ビジョン研究センター講師。青山学院大学兼任講師。著書に、『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)など。

Voice購入

2020年4月号

Voice 2020年4月号

発売日:2020年03月10日
価格(税込):840円

関連記事

編集部のおすすめ

村田晃嗣&三浦瑠麗 トランプは米国の鳩山由紀夫か

村田晃嗣(同志社大学教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

村田晃嗣 トランプ対マイノリティ

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

篠田英朗 「護憲派独裁主義」の欺瞞

篠田英朗(東京外国語大学教授)
リッツカールトン東京 Happy Fes 女性のHappyを応援する日

WEB特別企画<PR>

アクセスランキング

WEB特別企画<PR>

  • Twitterでシェアする
リッツカールトン東京 Happy Fes 女性のHappyを応援する日

21世紀のよりよい社会を実現するための提言誌として、
つねに新鮮な視点と確かなビジョンを提起する総合月刊誌です。