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気鋭の国際政治学者同士が激論!真のリアリズムに基づく国防とは何か

2018年06月01日 公開

村田晃嗣(同志社大学教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

プラグマティックな加憲案

村田 自民党の憲法改正推進本部が今年3月に改憲案をまとめましたが、主な変更は戦力不保持を定める2項を維持して「自衛隊」を明記する、という加憲案でした。

対して私は、原則論でいえば「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記されている2項を削除するのが最もスッキリしてよいと考えます。

年内の改正発議という政治日程や公明党との折り合いなどプラグマティック(実際的)な面を考慮すれば、たとえば加憲案は1つの落とし所だと思います。

衆参両院で改憲勢力が3分の2の議席を有する現在の安倍政権で憲法改正ができなければ、向こう数十年は改正の機会はないでしょう。法律の文言としてはやや奇異で、屋上屋を架す感がありますが、3項の追加は現実的なオプションとしてありうるでしょう。

三浦 9条2項を削除しない限りは、「必要最小限度」が何かをめぐる憲法解釈の神学論争は残ります。しかし、自衛隊を位置付ける意義がないともいえません。

自衛隊を明記する目的のうち、総理のいう「自衛官の子どもがかわいそう」という一見、情緒的な発言は、国防を託す軍人として正式に位置付け、特殊な身分に保護と名誉を与えることを意味しています。

それは本来、もう1つの目的と対になったものです。つまり、軍として認知することでシビリアン・コントロール(文民統制)の対象とし、政府や国会が積極的に統制する必要を自覚するためです。

戦後の日本政治を一党優位で支配してきた自民党は、自衛隊の擁護者のようでありながら、政治的理由から彼らを抑圧してきた側面があります。安全保障をめぐる国会の与野党対立のなかで、自衛隊の現場が政治的に不都合な真実を報告し記録に残すことを忌避する文化があるのです。

それが昨今の自衛隊のPKO(国連平和維持活動)やイラク派遣の日報問題、稲田朋美・元防衛大臣へ報告が上がりにくかった現象の裏に存在しています。

いずれも根底にあるのは、シビリアンとして真っ先に文民統制を行なうはずの大臣と自衛官との関係が、うまく確立していないという問題です。日報問題のような不祥事の再発を防ぐためにも、軍をもつことの意味を自覚し、リーダーシップスタイルを模索すべきです。

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著者紹介

村田晃嗣(むらた・こうじ)

同志社大学法学部教授

1964年、兵庫県生まれ。同志社大学法学部卒業。98年、神戸大学博士(政治学)。99年、『大統領の挫折』(有斐閣、1998年)でサントリー学芸賞、2000年、『戦後日本外交史』(共著、有斐閣、1999年)で吉田茂賞を受賞。13年4月から16年3月まで同志社大学学長を歴任し、現職。著書に『レーガン』(中公新書、2011年)など。


三浦瑠麗(みうら・るり)

国際政治学者

1980年、神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。同公共政策大学院修了、同法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、比較政治学、政軍関係理論。2016年より、東京大学政策ビジョン研究センター講師。青山学院大学兼任講師。著書に、『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)など。

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