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気鋭の国際政治学者同士が激論!真のリアリズムに基づく国防とは何か

2018年06月01日 公開

村田晃嗣(同志社大学教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

安全保障政策と交わる憲法論議を

村田 メディアの報道や学者の議論を見ていても、おかしいと感じることがあります。たとえば2015年7月に『朝日新聞』が憲法学者122人を対象に、安全保障関連法案の合憲性をめぐりアンケート調査を行ないました。

記事によると、憲法学者の9割が安保法制を違憲だというのですが、そもそも日本の憲法学者の多くは人権規定の専門家で、9条は専門外という人もいます。

もし将来またこのような調査を行なうのであれば、憲法9条を変えない立場の方々が、彼らの憲法解釈のもとでいかにいまの安全保障環境に向き合うべきかを問うてもらいたい。

なかには、「国際政治学者や評論家が9条を拡大解釈している」と批判しながら、同性婚の議論で「24条『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し』の『両性』は2つの性であるから、男女だけでなく、男男や女女も含まれている」と主張する憲法学者もいます。

同性婚の議論は必要ですが、そもそも憲法制定時には想定されていない問題です。その点で、集団的自衛権の行使と同じです。だが、どちらも明示的に禁止されてはいない。その一方に賛成で他方に反対という議論には、ダブルスタンダードを感じます。

三浦 安全保障政策について議論を始めている憲法学者もいるものの、専門外であるがゆえに、踏み込んで誤った判断をしがちです。たとえば、安全保障環境は変化していないと言い切ってしまう。

中国も北朝鮮も大した脅威ではないと解釈してしまう。アメリカがコミットメントを低下させる可能性はないと断言する。認識のずれには、ほとんど埋め難い距離があります。

ただし、政権側は、アメリカの内向き傾向についてもっと言葉を尽くして説明すべきだったと思います。それに言及しなかったのは、同盟関係においてアメリカ側にその論理を悪用されないための知恵ではあったのですが。

すでにトランプ政権の誕生によって、米国の内向き路線はかなり「見える化」されてしまいました。その点はもう一度、総括すべきだと思います。

村田 もちろん憲法を変えるというのはたいへん重い事柄であり、熟慮とコンセンサスが必要です。しかし、国際環境を変えることの不可能性に比べれば、憲法は間違いなくわれわれ自身で変えられる類のものです。自力で変えられるものから変えるという発想をもつべきではないでしょうか。

(本記事は、『Voice』2018年6月号、村田晃嗣氏&三浦瑠麗氏の「トランプは米国の鳩山由紀夫か」を一部抜粋、編集したものです)

著者紹介

村田晃嗣(むらた・こうじ)

同志社大学法学部教授

1964年、兵庫県生まれ。同志社大学法学部卒業。98年、神戸大学博士(政治学)。99年、『大統領の挫折』(有斐閣、1998年)でサントリー学芸賞、2000年、『戦後日本外交史』(共著、有斐閣、1999年)で吉田茂賞を受賞。13年4月から16年3月まで同志社大学学長を歴任し、現職。著書に『レーガン』(中公新書、2011年)など。


三浦瑠麗(みうら・るり)

国際政治学者

1980年、神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。同公共政策大学院修了、同法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は国際政治学、比較政治学、政軍関係理論。2016年より、東京大学政策ビジョン研究センター講師。青山学院大学兼任講師。著書に、『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)など。

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