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仮面ライダーにプリキュアルーム!?池の平ホテル「一人十色」の人気宿泊プランとは

2018年06月15日 公開
2018年06月15日 更新

牟田太陽(日本経営合理化協会理事長)&矢島義拡(株式会社池の平ホテル&リゾーツ代表取締役社長)

「何とかしなきゃいかん」

牟田 白樺湖畔(長野県茅野市)に位置する白樺リゾート「池の平ホテル」は、創業60年を超える歴史をもつ県内有数の観光施設です。矢島社長は、2011年に20代という若さで、祖父であり創業者の矢島三人会長(故人)から経営を引き継ぎました。

矢島 日本経営合理化協会の牟田學理事長(牟田太陽氏の父)には、祖父の代から多くのことをご指導いただきました。また、太陽専務理事(当時)には同じ創業2代目社長の立場からいろいろと相談させてもらい、たいへん感謝しています。今回、面と向かって対談するのは緊張します(笑)。

牟田 同ホテルを運営する池の平ホテル&リゾーツは、宿泊施設だけでなく、遊園地や美術館、スキー場なども展開しており、規模は年々拡大しています。一方で現在に至るまで、数々の経済危機や自然災害に見舞われるなど、辿ってきた道のりは決して平坦ではなかったのでは。

矢島 そうですね。白樺湖は1970年代、日本有数の別荘地として栄えました。首都圏や中京圏からのアクセスもよく、適度な距離感と過ごしやすさから集客も伸びる一方でしたが、バブル崩壊を境に下降を辿り、2008年のリーマン・ショック直後には、ピーク時の半分弱にまで業績が落ち込むこともありました。

牟田 まさにどん底状態のときに、会社を継ぐことになったわけですね。当時はどういう心境でしたか。

矢島 率直にいうと、「いいタイミングで自分に引き継いでもらった」と。後継者の心情として、好調時に会社を継ぐのは、じつはしんどい。逆境だからこそ、前に進んでいる部分は明確に結果となりますので、1つひとつの打つ手の成果をメンバーと共有しながら改善していくことができたと思います。

じっくり腰を据えて経営を見直していったこともあり、徐々に経営は上向きに転じ、大底の時期から1・5倍ほどまでに業績を回復することができました。

何よりありがたかったのは、会社の経営が苦しいなか、従業員たちが「何とかしなきゃいかん」と一致団結してくれたこと。社長就任当時は、トップが一気に60歳も若返ったことで、現場は困惑すると予想していました。

ところが、そうはならなかった。もちろん各メンバーのなかに葛藤もあったと思いますが、それをぐっと抑えて危機感を共有してくれた。仲間たちが、前向きに仕事に取り組んでくれたのが、精神的支えになりました。

牟田 いい話ですね。私が初めて池の平ホテルを利用した際、広い敷地と施設の数々を目にして、「これは1代でつくり上げられる規模ではない」と思いました。経営者が1代でできることは、本当に限られています。オーナー社長ですら、長い時間軸で見たらワンパートにすぎない。

創業者がイメージする会社のかたちを完成させるか否かは、2代目、3代目の後継者の腕にかかっている。だから社長業を継いだ者は、自社の経営状態と己の能力を照らし合わせながら、「自分の代ではここまでやる」と見極めることが重要になります。

矢島 どうしても経営者は、足元の経営数字に目を奪われて、将来のビジョンがブレてしまうことがある。そんなときは、先人の経営書を開き、原点に立ち戻るようにしています。

牟田太陽専務理事の著書『幾代もの繁栄を築く 後継者社長の実務と戦略』(PHP研究所)は、さまざまな経営者のエピソードを通して、事業経営の原理原則が語られています。私のような後継社長には、とくに感情移入できる話が多かったですね。

牟田 そういっていただくと、嬉しいです。創業社長と後継社長では役割がまったく異なり、その立場になった者でなければ理解できないことが多い。また、経営に正解はなく、重大な判断を下すのはつねに困難です。

「こういう局面でこう判断した」というケーススタディをなるべく多く紹介することで、世の後継社長の背中を押すことができるのではないかと思い、思い切って筆を執りました。

矢島 今後も座右の書として、自分が行き詰まった際にページを繰るだろうと思います。

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