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<連載>「パラアスリートの肖像」第11回 ジレンマを生きる <江崎駿(ボッチャ日本代表強化指定選手)>後編

2018年07月11日 公開

山田清機(ノンフィクション作家)、人物撮影=尾関裕士

 

(前回までの内容はこちらから)

 

 

パラが楽しい

東京・溜池のパラリンピックサポートセンターで、日本パラアイスホッケー協会の理事と日本代表チームのマネジャーを兼任する小山幸子に再会した。ピョンチャンのホッケーセンターで強化プラスティックの壁をこぶしで叩き続けていた、あの小山である(第9回参照)。

わざわざ小山に再取材を申し込んだのは、日本代表の敗因分析を聞きたかったからである。おそらく大半のメディアがピョンチャンパラ閉幕と同時に「2020東京」へシフトチェンジをしているのだろうが、そうしたメディアの薄情さにささやかな抵抗を試みたいという思いもあった。小山の言葉は、案の定であった。

「取材はパッタリなくなりましたね(笑)。2、3のメディアさんがキャプテンの須藤を継続取材して下さっていますが、やっぱりメダルがすべてなんでしょうね」

パラアイスホッケー日本代表は、参加8チーム中8位という成績だった。メダルを獲得した村岡桃佳(アルペンスキー女子)、森井大輝(アルペンスキー男子)、成田緑夢(スノーボード)、新田佳浩(距離スキー)の凱旋インタビューはテレビで何度か放送されたが、私の知る限り、ピョンチャンパラ閉幕後のテレビではパラアイスホッケーのパの字も聞くことがなかった。

パラサポセンターは東京オリ・パラの年度、つまり2021年の3月末までは使えるが、その後は「自立してほしい」と言われているそうだ。次の北京オリ・パラ(冬季)は2022年。日本代表は、そして小山はこれからどうするのだろう。

「7月にトライアウト(入団テスト)をやる予定です。以前よりは資金的にもずっといい状況になっていますけれど、ともかく選手の発掘をしなくてはなりません。もうひとつの課題は、競技団体としての基盤強化ですね」

小山は協会の理事とチームのマネジャーを兼任しているが、これは本来イレギュラーなことだという。「運営」と「強化」は分離すべきだというのである。

「JPC(日本パラリンピック委員会)からは、マネジメントと監督・コーチを分離しなさいとずっと言われ続けています。監督・コーチが結果を残せなかった場合、本来ならばマネジメントがその責任を追及するべきですが、そこが一体化していると厳しい追及ができず合理的な運営ができないのです」

しかしその一方で、小山はこんなことも言う。

「私は長野で、オリとパラ両方のボランティアをやりましたが、パラの方が数倍楽しかった。オリンピックはメダル至上主義でお金が絡むのでピリピリしていましたけれど、パラはそこから一歩引いたところにあって、メダルの価値もオリンピックとは違うと感じました」

オリとパラの違いはどこにあると、小山は考えているのだろうか。
「うーん、私、語彙が少ないので。ただ、パラはオリになり得ないというか……。パラはパラでいいんですよ」

答えに詰まった小山は、眉を八の字に寄せた。

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著者紹介

江崎駿(えさき・しゅん)

ボッチャ日本代表強化指定選手

2001 年、愛知県生まれ。あいちボッチャ協会所属。若手ながらずば抜けた強さを発揮し、2016年、強化指定選手選考会に選ばれる。2017年、BC4で「Bisfed2017ワールドオープン」バンコク大会出場。同年、日本ボッチャ選手権大会本大会で準優勝。「アジアユースパラ競技会(ドバイ)」で金メダル獲得。これからを期待される有望選手。

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