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<連載>「パラアスリートの肖像」第13回 ローポインター <藤澤潔(車いすバスケ選手)>後編

2018年09月12日 公開

山田清機(ノンフィクション作家)、人物撮影=尾関裕士

 

(前回までの内容はこちらから)

 

 

世界の強豪が集う国際大会

6月10日(日)、小雨が降りしきるなか、「三菱電機ワールドチャレンジカップ2018」の会場、武蔵野の森総合スポーツプラザに足を運んだ。

京王線飛田給駅から試合会場に続く道には、観客らしき人々が、大勢とは言わないが少なくない人数歩いており、車いすバスケの認知度の高さを物語っていた。

6月8日にスタートしたこの大会には、オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本の4カ国が参加しており、日本代表は予選リーグで3戦全勝して、この日、オーストラリアとの決勝戦に臨むことになったのである。

オーストラリアは昨年のこの大会の覇者であり、リオパラリンピックでも6位に入賞した強豪である。ちなみに、リオパラの車いすバスケの順位は以下のとおり。

金メダル アメリカ

銀メダル スペイン

銅メダル イギリス

以下、4位トルコ、5位ブラジル、6位オーストラリア、7位オランダ、8位ドイツ、9位日本、10位イラン、11位カナダ、12位アルジェリアの順。

日本の男子はリオで11大会連続出場(通算12回)を達成したものの、メダル獲得の経験は一度もなく、最高順位はソウルパラと北京パラの7位。オーストラリアのみならず、今大会の予選リーグで勝利したドイツも格上の存在であり、カナダもリオパラこそ振るわなかったものの、2000年のシドニー、2004年のアテネ、2012年のロンドンで金メダルという実績を誇っている。

こうした世界の強豪を相手にしての決勝進出は、自国開催という利点を差し引いても、日本の車いすバスケの実力が世界のトップレベルに近づきつつあることの証であると言っていいだろう。

 

一進一退のシーソーゲーム

16時15分、決勝戦がスタートした。

客席は半分近く埋まっている。一部有料のアリーナ席もほぼ満席。私は2階席に陣取ったが、観客の多くがスポーツMCの掛け声に合わせて、スペシャルパートナーの三菱電機が配ったバルーンスティックを打ち鳴らしながら、「ニッポン、ニッポン」の大声援を送っている。

藤澤潔(2.0ポイント)は背番号11を背負い、スターティングメンバーのひとりとして出場した。その他のスタメンは豊島英(2.0)、鳥海連志(2.5)、香西宏昭(3.5)、村上直弘(4.0)という顔ぶれ。日本を代表するトッププレーヤーばかりである。

ちなみにこの大会に日本代表としてエントリーしている12人の年齢を見てみると、最年長が藤本怜央の34歳で、32歳の藤澤は藤本に次いで上から2番目。スタメンのひとりで、古澤拓也(3.0)とともに若手のホープと目される鳥海連志は、実に19歳という若さである。

この年齢差を考えただけでも、2年後の東京パラへの出場が藤澤にとっていかに狭き門であるかがわかる。

第1ピリオド、日本は18対14とリードを奪った。オーストラリアには長身の選手が多くパワーもスピードもあるが、日本のディフェンスがよく利いて、オーストラリアは苦しい姿勢からシュートを打つ選手が多かった。

藤澤は第2ピリオドにも出場してシュートも決めたが、日本は28対30と逆転を許してしまう。

15分のハーフタイムをはさんでの第3ピリオド。鳥海が鮮やかな3ポイントシュートを決め、豊島英もフリースローを2本きっちり決めるなど、藤澤と同じローポインターたちの活躍が光った。そして、第3ピリオド終了の40秒前、藤本怜央のシュートで51対48と日本が再び逆転。試合は完全なシーソーゲームの様相を呈してきた。

そして迎えた第4ピリオド、場内の大声援に応えるように、藤本とともに日本の二枚看板と呼ばれる香西宏昭が奮起。常にポーカーフェイスの豊島も珍しく闘志をむき出しにしたプレーを展開し、このふたりだけで実に14得点を叩き出してオーストラリアを突き放した。

結果は65対五56で日本の勝利。公式戦ではほとんど勝ったことのないオーストラリアを相手に、予選と決勝戦で2度勝利するという快挙を成しとげたのである。

決勝戦での藤澤は出場時間こそ長かったものの、放ったシュートはわずかに2本。得意の3ポイントシュートを打つ姿は最後まで見られなかった。もちろん、ディフェンスやアシストとして活躍していたのだろうが、藤澤がライバルと目す同じ2.0ポイントの豊島の活躍が華々しかっただけに、少々歯がゆい感じが残った。

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著者紹介

藤澤潔(ふじさわ・きよし)

車いすバスケ選手

1986年、長野県長野市生まれ。5歳の時、跳び箱から落ちて脊髄を損傷し、車いすの生活となる。中学2年で体験会への参加をきっかけに車いすバスケを開始。高校1年のとき、本格的に車いすバスケットボールをはじめ、2005年、世界ジュニア選手権大会への出場をきっかけにパラリンピックを目指しはじめる。12年、長野WBCから埼玉ライオンズに移籍。2014年、北九州チャンピオンズカップ出場。15年、リオデジャネイロパラリンピック予選であるIWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ男子日本代表。16年、リオパラリンピック男子日本代表。

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