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三連覇と松下幸之助の教え(広島東洋カープ監督・緒方孝市)

2018年09月16日 公開

緒方孝市(広島東洋カープ監督)

いよいよセ・リーグ三連覇を目前に控えた広島東洋カープ。この球団史上初の快挙を演出したのが、2015年からチームの指揮を執る緒方孝市監督だ。チームを指揮するうえで影響を受けたという意外な「偉人」とは?

 

写真:大島拓也

 

意識を変えてくれた一冊の本

――監督に就任して4年目のシーズンですが、チームを指揮するうえで意識されている人物はいますか。

緒方 影響を受けているのは、松下幸之助(パナソニック創業者)さんですね。

――きっかけは何だったのでしょう。

緒方 就任1年目に、知人から「こういう本があるよ」と勧められたのが、『松下幸之助 成功の金言365』(PHP研究所)でした。私の意識を変えてくれた本で、いまでも移動時に持ち歩いています。ビジネスの世界では神様のような存在ですが、じつは野球の世界でも松下さんの本を読んだり、言葉にふれたりすると、戦うチームをつくるうえで共感する点がとても多い。

たとえば、「任せて任せず」という言葉。松下さんは部下に仕事を任せることが大切だと語っていますが、それは任せっぱなしでいい、という意味ではない。リーダーは四六時中、組織の状況を正確に把握しておく必要があり、選手一人ひとりの動作に至るまで気を配って観察していなければ、肝心の勝負時や危機にあたって臨機応変な対応ができません。

――最終的にはリーダーにすべての責任がある、という自覚を促す言葉でもあります。

緒方 チームには1軍・2軍合わせて約70人もの選手がいるので、監督1人で全員の状態を見極めることは難しい。だからこそ各担当コーチに「任せて」技術的指導をしたり、トレーナーがコンディションのケアをしたりするなかで、選手の情報を私にも共有してもらいます。

しかし、最終的には私が責任をもつ。皆の力を借りながら戦う前の準備を万全に整えることで、試合のなかでベストだと信じる采配を振ることができるわけです。試合に臨むにあたり、対戦相手の情報を頭に入れるのと同じくらい重要なのが自分のチームの状況を知ることです。

 

長いシーズンに挑むうえで大切なこと

――松下幸之助は「活力ある組織」の大切さを説いていますが、いまのカープからはまさに監督、コーチ、選手のあいだにある活力と一体感が伝わってきます。

緒方 そのような印象を与えられるのも、チーム関係者のおかげでしょう。私は指導者ではありますが、一人でチームを動かしているわけではない。コーチやトレーナー、さらには練習をサポートするバッティングピッチャー・キャッチャー、用具係、マネージャーがいて、はじめて選手を導くことができる。

選手も周囲の人間の支えがあって試合に集中できていることを自覚しているはずです。「一つの組織」として団結することは、長いシーズンを戦ううえでとても大切です。

松下さんの言葉には不思議な力があります。これまで多くの本を読みましたが、たとえ結論は同じだとしても、松下さんの本だけは自分の受け取り方が違う。一つひとつの言葉はとてもシンプルなのですが、胸の奥深くまで入ってきて、新鮮に感じることができる。課題や悩みを抱えているときにも、自然と手に取りますね。

――就任1年目の2015年は優勝を期待されながらも4位。さまざまな葛藤もあったことと思います。

緒方 いまも日々の結果に振り回されたり、悩んだりすることはあります。そんなとき、松下さんの言葉は気持ちを切り替えるうえでのヒントになりますし、次の試合に臨むモチベーションを与えてくれる。松下さんの本は自分にとって「バイブル」のようなものかもしれません。

 

(本稿は『Voice』2018年10月号、緒方孝市氏の特別インタビュー「三連覇で広島に勇気を」を一部抜粋、編集したものです)

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著者紹介

緒方孝市(おがた・こういち)

広島東洋カープ監督

1968年、佐賀県鳥栖市生まれ。86年にドラフト3位で広島東洋カープに入団。俊足、強肩、強打の外野手として長く主力を務めた。盗塁王3回、ゴールデン・グラブ賞5回。通算成績は出場 1808試合、安打 1506本、本塁打 241、打点 725、通算打率 .282、盗塁 268。2009年に現役引退後、コーチを経て15年に監督就任。翌16年にチームを25年ぶりの優勝へ導き、17年には37年ぶりの連覇を果たした。

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