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『ルポ川崎』が浮き彫りにした社会のタブー

2018年10月16日 公開
2018年10月16日 更新

磯部涼(フリーランスライター)

「BAD HOP」のようになりたい子供たち

――本書では磯部さんが専門としてきた音楽の歌詞や作品の背景が軸となっていますね。それが独特のリズムを生んで、ページを捲る手が止まらなくなりました。

磯部 意識したわけではないんです。ただ、取材を進めるなかであらためて文化の力を実感しました。ヒップホップは若者には絶大な人気の文化で、「BAD HOP」のようになりたいと思っている子供たちが、川崎には数えきれないほどいる。

若い子が抱きがちな夢といってしまえば、それまでなんですけれど、一時でも将来の目標をもつことができたという事実はやはり重い。音楽に限らず、文化は彼らの逃げ道やストレスの発散、さらに救いになっているのです。

――ラップというと「不良の音楽」であり、それだけで嫌悪する大人も多いと思いますが、なんでも決め付けはよくありませんね。

磯部 実際にラップのもつ悪いイメージに吸い寄せられて、問題を起こしてしまう子供もいます。文化に過剰な期待をもちすぎてはいけません。ただ、ラップに支えられて、なんとか明日を生き延びる糧を得ている子供も多いという事実を知ってもらえたらと思います。

(本稿は『Voice』2018年11月号、「著者に聞く」磯部涼氏の『ルポ川崎』を一部抜粋、編集したものです)

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