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「隠れ移民大国」日本はどうすべきか 欧州移民政策の失敗から見えたこと

2018年11月09日 公開

宮下洋一(ジャーナリスト)

欧州で揺れる移民・難民問題の現状は、本サイトの宮下洋一氏「移民の制限を訴えたら『極右』なのか?欧州で台頭する『自国ファースト』の最前線」に綴られている。では欧州の状況を踏まえ、日本は今後、移民・難民問題にいかに向き合うべきなのか。自らも移民としてスペインに在住するジャーナリストの宮下氏が、欧州とは異なる日本の「おもてなし」精神を指摘する。

 

日常生活で実感する「文明の衝突」

欧州の移民問題は、各国の政治や経済、地理や文化などの違いに雲泥の差があり、複雑極まりない。あくまでも個人的ではあるが、経験に基づく私なりの考えをまとめてみたい。

私自身が移民として長年、海外生活を送る中で、人種差別を受けたこともある一方で、多文化・多言語で生きる醍醐味もたくさん味わってきた。日本国籍を持つことは、大きなメリットであった。

しかし、通貨が統一され、EU市民の縄張りが強化されていくと、滞在や労働許可の面では、残念ながら日本人でもデメリットが多かった。それでも移民として生きることに対し、特別な不満は何もない。

移民という個人個人の存在に、私は、否定的な感情をまったく持たない。私の友人も半分以上が移民である。特に、陸続きの西欧諸国では、難民や移民に対し、理由なく差別することはあまり考えられない。

しかし、移民という個人の集まりが集合体となった時、所謂、コミュニティが形成された時に問題は発生する。

そこで初めて価値観の対立が起き、社会が困惑し、排斥感情が湧き上がるのだ。その集合体が大きければ大きいほど、「知らない新しい存在」に対し、人間はさらなる恐怖を覚えるのだろう。

アメリカの政治学者、サミュエル・ハンチントン氏が述べた「文明の衝突」という状況を、私は普段の生活の中で目撃し、実感する。

衝突の場面というのは、決まってホスト国に順応できない(というよりも、しない)人々が自らの価値観だけで生活したり、それを押し付けようとしたりする時である。

語学留学生よりも、難民や移民が滞在国の言語を習得しなくてはならないというのは、異文化適応のための最重要課題である。

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欧州とは異なる日本人の「おもてなし」精神 >



著者紹介

宮下洋一(みやした・よういち)

ジャーナリスト

1976年、長野県生まれ。18歳で単身アメリカに渡り、ウエスト・バージニア州立大学外国語学部を卒業。スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールでジャーナリズム修士。著書に、第21回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作『卵子探しています 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』(小学館)など。

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