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千葉雅也&三浦瑠麗 『新潮45』杉田水脈論文に隠された本当の意味

2018年12月10日 公開

千葉雅也(立命館大学准教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

 

問題にしているのはあくまで「生殖」の話

千葉 だいたいそのイメージ自体が古いですよね。マイノリティに対する軽薄な「共感(同情)」の問題は、なぜ「生産性」という言葉に人びとが敏感に反応したのか、という点ともつながります。

平たくいえば、現代の能力主義的ネオリベラリズム(新自由主義)の潮流のなかで、人びとは日々「お前に生産性はあるのか」というプレッシャーを受け続けている。

人間の活動を経済合理性の有無で評価する二分法に対し、では障害者や老人、寝たきりの患者はどうなのか、と反論するリベラル側の意見があります。

しかし、これは誤読だと思う。杉田論文が問題にしているのは、子供ができるか否かという「生殖(reproduction)」の話です。国家とは、国民が子供を自然なかたちで産出するよう要請するものである、という国家の本性にフォーカスを定めるべきなのです。

その点、杉田論文の表現は過激であるどころか、むしろ「子供をつくれ」と直裁に書くと表現として強すぎるから、いったん「彼ら彼女らは子供をつくらない」といったうえで、一種の婉曲語法として、つまりトーンを弱めるために、そのことを「生産性」というワードに置き換えたのではないか、とさえ思います。

三浦 生産性という言葉に鍵括弧を付けていますしね。

千葉 そう。さらに、生殖の問題については「クィア(規範的な異性愛以外のセクシュアリティを指す)」の人たちのなかでも議論があります。

「自分たちは子供を産めないし、一級市民でなくても別に構わない」という逆説的な開き直りもあれば、「養子でもよいから子供を育てたい」という立場もある。

ただ、今日、世界的に同性婚の流れが所与の認識とされ、LGBT当事者のなかでのさまざまな齟齬の歴史が忘れられていくなかで、杉田論文は「生殖」というクィア・ポリティクス(クィア政治学)の論点を再び想起させた。

その点では、杉田論文にはむしろ意味があったのだとすらいえる、と僕は考えています。

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