ホーム » Voice » 社会・教育 » 千葉雅也&三浦瑠麗 政治以前の「欲望」をいかにすくうか

千葉雅也&三浦瑠麗 政治以前の「欲望」をいかにすくうか

2018年12月25日 公開

千葉雅也(立命館大学准教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

写真:吉田和本

月刊誌『新潮45』休刊に至る一連の騒動については、本サイト「千葉雅也&三浦瑠麗 『新潮45』杉田水脈論文に隠された本当の意味」「千葉雅也&三浦瑠麗 「愛」と「性愛」は切り離せるか?『新潮45』LGBT騒動を振り返る」において激論が交わされた。議論はLGBT問題にとどまらず、米トランプ政権の分析、そしてグローバル資本主義の趨勢にまで及んだ。両氏が描く「国民国家の未来」とは。

 

グローバル資本主義は本質的な差異をなくす

千葉 グローバル資本主義の最大の特徴は、境界に関係なく、異質な物事を何であれ交換可能にしていく、という点です。フランスの哲学者ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの概念によれば、これを資本主義による「脱コード化」といいます。

異質なものを交換可能にすることで、本質的な差異はなくなっていく。そうすると、ヘテロセクシュアルに対抗するゲイの本質的な差異、ないしは文化的独自性も薄れ、双方は共に、いつでも立場を交換できる「世界市民」となる。

逆にいえば、誰もが多少なりともマイノリティだということになり、マジョリティとマイノリティの歴史的葛藤は忘却されていく。こうした脱コード化の流れは人類史的に最も大きな流れであって、止めることはできません。

他方で脱コード化の動きには、バックラッシュ(反動)が伴う。これを「再コード化」といいます。杉田論文も小川論文も、激化するグローバルな脱コード化のなかで、旧来の主体化の鋳型をなんとか維持しようとする、再コード化のあがきにほかならない。

アメリカのトランプ政権が推し進める政策も、脱コード化に抗う再コード化の流れにあります。2018年10月、性の定義を生まれつきの性別に限定する措置を検討している、と発表したのもその1つでしょう。

しかしこうしたバックラッシュは、長期的に見れば脱コード化の趨勢に敗れる運命にあると思います。

三浦 リベラルの運動の結果として保守的なものへの反動が起きたのではなく、グローバリズムによる脱コード化の副次的現象として顕在化してきた、ということですね。

千葉 そのとおりです。現在の同性婚やパートナーシップ制度の動きは脱コード化による必然的帰結であって、同性婚の推進などはことさらにデモなんかしなくても勝手に進んでいく、と思いますよ。

次のページ
国民国家の再統合としての軍隊 >



関連記事

編集部のおすすめ

千葉雅也&三浦瑠麗 『新潮45』杉田水脈論文に隠された本当の意味

千葉雅也(立命館大学准教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

千葉雅也&三浦瑠麗 「愛」と「性愛」は切り離せるか?『新潮45』LGBT騒動を振り返る

千葉雅也(立命館大学准教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

千葉雅也 禁煙ファシズムから身体のコミュニズムへ

千葉雅也(立命館大学准教授)

『龍使いになれる本』10万部超の著者大杉日香理と歴史NO.1雑誌『歴史街道』 編集長と行く! 香取神宮 日帰りバスツアー

アクセスランキング

  • Twitterでシェアする
『龍使いになれる本』10万部超の著者大杉日香理と歴史NO.1雑誌『歴史街道』 編集長と行く! 香取神宮 日帰りバスツアー

21世紀のよりよい社会を実現するための提言誌として、
つねに新鮮な視点と確かなビジョンを提起する総合月刊誌です。