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数学こそ人間が探している神である

2018年12月05日 公開

マーカス・デュ・ソートイ(オックスフォード大学数学研究所教授)


取材・構成・写真:大野和基(国際ジャーナリスト)

テクノロジーの発達が著しい今般、著書『素数の音楽』が世界的ベストセラーになった数学者のマーカス・デュ・ソートイ教授は、数学の役割をどう考えているのか。国際ジャーナリストの大野和基氏が聞く。※本稿は『Voice』2019年1月号、マーカス・デュ・ソートイ氏の「数学は人間が探している神である」を一部抜粋、編集したものです。

 

創造主の候補は数学

――科学のもっとも基本的なベースとして、数学の役割について話をしましょう。ハーバード大学の理論物理学者であるリサ・ランドール教授にインタビューしたとき、宇宙を探索するには、複雑な方程式を解く数学的な能力が必要であると指摘していました。

ソートイ リサとは知り合いですが、そのとおりです。

――その意味では、数学が専門であるソートイ教授は、どの分野の科学についても話せる適任者ですね。

ソートイ まさにそこがポイントです。リチャード・ドーキンス氏の後継者として、このポスト(シモニー教授職)に数学者を選んだのはいい選択だったと思います。

あらゆる科学者と話をする際、使うべき言語は科学の言語、すなわち数学なのです。宇宙が進化し、拡大し、加速化している実態を理解するのに、数学は非常に重要です。

また数学は、物質を構成するクォークと呼ばれる粒子が存在することを教えてくれました。われわれはクォークを目で確認したことはありません。それはほんとうに数学上の概念なのです。

――科学が埋めることができないこともありますね。

ソートイ それは、全体に通っている「糸」です。われわれが知り得ないこと、理解を超えていることで、「隙間の神」という概念がそこに出てきます。

科学が埋めることができないことは、神学が引き継いできたということです。多くの人は、創造主の概念を求めます。創造主は何を解決するのか。人類がどこから来たのかという、ビッグ・クエスチョンを解決します。それは知り得ないことの1つです。

――日本には創造主(唯一絶対の神)という概念そのものがないですが、その創造主はどこから来たのですか。

ソートイ 私の子供たちがいうように、創造主そのものが創造されなければならない、ということですね。すると、無限後退(ある事柄の成立条件の条件を求め、さらにその条件を求めるといったふうに無限に遡ること)になります。

でも、1つだけ創造する必要がないものがあります。それは数学です。数学は時間とは関係ありません。時間という概念がないのです。

数学は構造という性質であると思います。ですから、もし創造主を探しているのなら、数学が非常にふさわしい候補です。

人はよく「もし神が存在するなら、それは間違いなく数学者である」といいますが、それは逆であると考えています。私なら次のようにいいます。

「それは違います。皆さんが探している神が数学である。数学こそ皆さんが探している神なのです」

数学がありとあらゆるところに存在している理由は、あとから入れ込んだものではなく、まさに最初からそこにあるからです。われわれの周囲にあるものは、数学が具体化された断片だと私は確信しています。



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