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「年金は破綻しない」と断言できる3つの根拠

2019年01月11日 公開

荻原博子(経済ジャーナリスト)

年金は、今すぐ全額支払うものではない

今、私たちが加入している公的年金は、過去の大盤振る舞いや杜撰な管理など様々な理由で、超高齢化社会に対応できるだけの十分な積立がない状況です。

しかも、みなさんご承知のように、その大切な虎の子の積立金も、その多くを株式運用や外貨建て投資信託などのリスクのあるものに投資しているので、経済状況の悪化や為替相場の変動によって、目減りしてしまう可能性があります。

ですから、「こんな状態ならさっさと年金を解散して、積立金を山分けすればいい。

保険料は各自で将来のために積み立てていったほうがいい」と考える人もなかにはいるようです。

しかし、公的年金は、借金が山のようにある家庭のようなもの。すでに1000兆円近い積み立て不足があるために、今解散したら積立金をもらえるどころか、1人1000万円くらいずつ逆に支払わないと、公的年金は廃止できません。

単純に4人家族なら、約4000万円支払うということになり、とても現実的とはいえません。

実は、民主党政権時に、今の年金制度を、自分が支払った分だけを将来受け取れるような年金制度に変えようとしたことがあります。ところが、すでにある年金制度が、あまりに借金だらけだったために制度の変更ができなかったという経緯があります。

それでも年金は、どんなに借金だらけであっても、「破綻」しません。なぜなら、その借金を、すぐに全額支払わなくてもいいからです。
 

戦時中にスタートした日本の年金制度は、預金封鎖も乗り越えた

過去に日本は、太平洋戦争という大きな戦争を経験しました。この戦争は、1941年12月に、日本がアメリカ、イギリスに宣戦布告し、1945年8月まで3年9ヶ月続きました。

実は、当時の逓信省(その一部が、後の郵政省、今の日本郵政)が、この戦争が始まる前の1941年10月に、「定額郵便貯金」を、そして戦争の最中の1942年6月に、今の厚生年金の元と言える「労働者年金」(今の厚生年金)をスタートさせています。

日本の命運をかけた戦争の前後に、将来のための貯金や会社員の福利厚生のための年金が誕生しているというのもおかしな話ですが、これは戦費調達の手段だったと言われています。

この戦争で、日本は敗戦。国の財政は破綻状態になりました。そのとき明暗を分けたのが、「定額郵便貯金」と「労働者年金」です。国が戦争に負けたことで、みんなが「定額郵便預金」などの引き出しに殺到しました。

けれど、「定額郵便貯金」で集めたお金はすでに戦費に回され、金庫の中は空っぽ。

戦争でお金を使い切ってしまっていたために国民に預金を払い戻すことができなくなった政府は、「預金封鎖」という手を使い、国民の預金の引き出しに制限をかけました。その間にインフレが進んで新円切り替えも行われ、貨幣価値が目減りします。

貨幣の価値が大幅に低下すれば、お金は紙切れ同然です。国に預けたお金も価値を失います。こうして、国は、事実上、庶民から預かったお金を「踏み倒し」たのです。

一方、年金制度はスタートしたばかりで、支給するのはかなり先のこと。ですから、集めたお金が戦費で使われていても、踏み倒しのようなことは起きませんでした。

つまり、すぐに引き出せる預金とは違い、どんなに大きな借金があっても、年金は65歳以降に支給することになっているので、破綻はしにくいということです。

もちろん、それをいいことに、積立金の杜撰な投資を続けていると、負債が雪だるま式に増えていくのは言うまでもありません。

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