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30年で「高貯蓄キリギリス」から「低貯蓄アリ」となった日本人

2019年02月27日 公開
2022年10月27日 更新

竹中平蔵(東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授)

平成に、「長時間労働」も約20%減に

平成時代に、日本人は"高貯蓄アリ"から"低貯蓄キリギリス"に変わったわけだが、このことは、労働時間の変化にもはっきり現れている。

「勤勉で、長時間よく働く」「長期休暇はおろか、有給休暇すら取らない」ことは、長い間、日本人のイメージであり常識でもあった。

30人以上事業所の年間総実労働時間は、1960年(年度、以下も同じ)に2426時間(残業を除けば2164時間)もあった。

夏休みも正月休みもなしに毎週6日、7時間46分働くと、この労働時間になる。日本が豊かになるにつれて労働時間が減っていくのは当然で、75年には2077時間となった。

その後は、ゆるやかな上昇か横ばいが続き、87(昭和62)年の2120時間から一気に減少へと向かいはじめる。きっかけは週40時間労働を明記した87年の労働基準法改正だった。90年代以降は週休2日制(週5日制)も普及が進んだ。

17年は1710時間で、イギリスの1681時間より長く、スウェーデン.フランス.オランダ.ドイツの1600〜1300時間台より、かなり長い。しかしアメリカの1780時間よりは短く、韓国やロシアの2000時間前後より、かなり短い。

実労働時間の短縮と時期を同じくして進んだ労働の大きな変化は、非正規労働者の増大である。

日本の役員を除く雇用者数(もちろん個人事業主も含まれない)は、89(平成元)年に4269万人で、うち非正規雇用労働者は19.1%、817万人。

この数は、一時的にやや減ったリーマンショックの翌09年を除けば一貫して増加し、17(平成29)年には雇用者数の37.3%、2036万人となった。パート・アルバイト・派遣社員・契約社員・嘱託などが増えれば当然、正社員のウェイトは小さくなっていく。

ただし正規雇用労働者の数は、89年の3452万人から17年の3423万人と、約1%減少しただけで、ほとんど変わっていない。

このような変化は、そもそも日本に正規雇用と非正規雇用という区別が存在し、労働市場が二重構造になっていることの問題点を浮きぼりにしている。

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