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韓国が日本政府を侮辱し続けても、止められない「ごね得」

2019年03月04日 公開
2021年07月27日 更新

渡瀬裕哉(パシフィック・アライアンス総研所長)

「正義は勝つ」と夢見る規範論者

日本人が勘違いしていることは、正しいことを主張したほうが勝つ、と思っていることだ。日本人は誰しもがリアリストを主張するが、じつは与党や野党も「正義は勝つ」という夢見る規範論者なのだ。

その日本人の誤ったマインドは哨戒機から撮影した生動画を公開したことで満足していたことに端的に示されている。

たしかに、普段はおとなしい日本政府にとってじつに思い切った行動であったことは認めるが、それで日韓の正当性争いの勝負がついたと認識することはいかにも甘い。

いじめられっ子が一発殴り返しただけで、自己満足するようなものだ。いじめにも喧嘩にも勝利していない。

実際、韓国は日本側の動画公開後に愚にもつかない対抗動画を作成・公表したが、日本人は韓国の動画の稚拙さをあざ笑う声が多数であった。しかし、残念ながら、それは完全な間違いだ。

日本人は韓国政府の国際的なPR能力を舐めすぎている。

米国でロビイストの活動状況を監視しているOpenSecrets.orgによると、米国司法省が公表している数字で2017年の米国でのロビー活動に支払った金額の世界1位は韓国であり、世界第2位の日本を上回っていた。

韓国のロビー活動の主な対象は経済問題であるが、それ以外にも2016年の司法省データを参照すると反日に的を絞ったキャンペーンを柱として堂々と慰安婦問題に関するロビー活動を行なっていた旨が記載されている。

そして、これらの表面上に現れるロビー活動資金は米国における外国政府の資金投下の氷山の一角にすぎない。

国際的な係争では声が大きくわかりやすい既成事実をつくったほうが有利だ。そのため、日本側が公開した動画はPRの観点から完全に敗北している。

韓国はなりふり構わず滅茶苦茶な主張を繰り返しているが、それは米国から見て日韓どちらに正当性があるかを不透明にする泥仕合に持ち込むことを狙っているからだ。

また、日本に仮に正当性があると明確になったとしても、米国の仲裁に関わる外交コストを引き上げることを意図しているともいえるだろう。

日本政府が米国の目を意識してマゴマゴしているあいだに韓国の思惑どおりに話が進んでいるのだ。

日本政府は米国の視線を不必要なまでに気に掛けている。他方、米国を自国の国益に合わせてうまく使うことに関して韓国以下の能力しかない。なぜなら、日本政府は米国の国益を自国の国益と混同しているからだ。

少し考えればわかることだが、日米韓の連携を取るよう米国に要望することは、前述の東アジアの環境のなかでは韓国のごね得に結果として繋がるだろう。

現在、北朝鮮・中国とセンシティブな交渉の最中にある米国は同地域の同盟国同士の小競り合いについて、積極的にどちらかの側に立って干渉するコストを割くインセンティブをもっていない。

もちろん韓国もその程度のことは先刻承知であるため、韓国政府の日本に対する暴虐な振る舞いが止まることはない。

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