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北朝鮮との開戦を思いとどまらせた、徴兵制の“抑制効果”

2019年03月08日 公開

三浦瑠麗(国際政治学者)

「血のコスト」と国防への意識が高い韓国

ここで、韓国政治が保守にまたブレたりはしないか、という疑問について答えておくと、私は今後保守が単独で政権を取るというのは難しいのではないかと思っています。

というのも、保守には確固とした経済政策があるわけでもなく、南北融和が進んだいまとなっては、進歩派に勝てる見込みが見当たらないからです。

兵役の短縮、年金改革、若年世代への配分強化、社会福祉の拡充、経済の民主化、言論の自由、MeToo運動、どれをとっても目標は進歩派の側に分があります。

文在寅大統領が人気を下げたのは、ひとえに経済政策において失敗したからであり、それは手段をめぐる大失敗ではありましたが、目標の正しさを疑わせるものではなかったからです。

進歩派が北に融和的であることは確かです。兵役を短縮して陸軍の規模を縮小しようとしていることも確かです。

でも同時に、進歩派は負担の不均衡にも敏感です。文在寅大統領は兵役経験を強調していますし、盧武鉉元大統領は兵卒から兵役を勤めた初の大統領として脚光を浴びました。

現状、それでもエリートが集う高官のあいだでの兵役逃れ率は高いのですが、そうした特別扱いに対して世間の目が厳しいことも十分理解しています。

韓国の徴兵制は、先進各国に比べて実戦を経験する可能性が高く、免除率が際立って低い(約2.4%)ことが特徴です。

つまり、韓国においてはいわば「血のコスト」(経済コストに還元できない兵士の労力や犠牲)を平等に負担すべきだという意識がきわめて高く、国防意識も日本に比べればはるかに高いということです。

その副作用はもちろん存在します。韓国では徴兵した人員をそのまま前線に張り付けるためストレスも高く、さまざまな問題が指摘されてきました。

その一つが、軍のなかの凄惨ないじめや体罰、精神的負担、そしてその隠蔽体質です。2014年には自殺問題が脚光を浴び、多くの報道が集中しました。

また、兵役を逃れたいということも1つの動機となって、2016年の統計では1年あたり4000人程度が国籍を離脱しています。

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