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戦争と平和のコストを認識しているか

2019年03月12日 公開

三浦瑠麗(国際政治学者)

三浦瑠麗写真:吉田和本

徴兵制というと、好戦的で時代遅れなイメージがもたれがちである。しかし国際政治学者の三浦瑠麗氏は、徴兵制には戦争を「我が事」と考えて、思いとどまらせる“抑制効果”があるという。長年、平和な戦後を享受してきた日本の覚悟を問う。

※本稿は『Voice』4月号、三浦瑠麗氏の「戦争と平和のコストを認識しているか」を一部抜粋、編集したものです。

 

「血のコスト」認識に支えられた南北融和

民主国家において戦争の決断を容易にするのは、「我が事」としての関心はもたないのに、正義感が煽られるような場合です。

韓国にとって、北朝鮮は近すぎる敵です。引っ越しができず、同一民族である以上、逃れようとしても逃れられない敵なのです。

北朝鮮とのあいだで万が一大規模な戦争が起これば、それはソウルが火の海にのまれ、核戦争にまでエスカレートする可能性を意味します。当然、北朝鮮との戦争をめぐっては世論の洗礼を避けて通ることはできない。

したがって、そうした身近な脅威をめぐる問題においては、韓国が徴兵制を取っていることによる抑制効果が生じたのです。

同じ効果が発揮されたのが、昨年急速に進んだ南北融和でした。文在寅大統領のイニシアチブによって始まった融和プロセスは、不可逆的な効果を生んだと私は思っています。

なぜならば、韓国国民はその急速な変化を受け入れ、結果的に北朝鮮の金正恩委員長に対する好感度はうなぎ上りとなったからです。

昨年2月時点で韓国の世論調査における金委員長の好感度は10%でしたが、わずか2カ月のあいだに78%に達しました。融和が好感されたのは、それが平和や民族統一の予感を意味したからでしょう。

実際、入営を控えた若者のあいだでは、終戦宣言が出されるならば志願兵制に移行するのではないかという期待が高まり、兵務庁には「入営を延期できるか」と問い合わせが相次いだといいます。

一見あまりに融和的すぎるように見える韓国社会の態度は、そうした現実的な血のコスト認識に支えられたものであったといえます。

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