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進まない非核化の裏で行なわれる、北朝鮮の犯罪行為

2019年03月18日 公開

古川勝久(国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル元委員)

古川勝久※画像はイメージです

米朝再会談後も非核化は進んでいない。一方、国連制裁を逃れる北朝鮮の横暴を各国は静観している。国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル元委員の古川勝久氏が、北朝鮮が行なう犯罪行為の実態を明らかにする。

※本稿は『Voice』4月号、古川勝久氏の「進まない非核化と『トランプ劇場』」を一部抜粋、編集したものです。

 

米朝首脳が協議しない課題も無視できない

国連専門家パネルの最新の報告書は、北朝鮮が国際社会に及ぼす問題が、もはや核・ミサイルにとどまらない現実を浮き彫りにしている。北朝鮮の核・ミサイル関連活動は大幅にペースダウンしており、これ自体は重要な進展である。

しかし他方、北朝鮮による密輸や資金洗浄などの金融犯罪、サイバー攻撃、また中東・アフリカの紛争地域に対する兵器供給など、数々の制裁違反事件が報告されている。これらはれっきとした犯罪行為である。

米朝首脳会談は、これらの犯罪行為を主な議題とはしていない。だが、北朝鮮がこれらの犯罪行為を続けるかぎり、さまざまな制裁や規制を科され続けることとなる。

北朝鮮と、米国をはじめとする国際社会との関係の改善のためにも、北朝鮮に犯罪行為をやめさせなければならない。

国連専門家パネルによると、北朝鮮によるグローバルな非合法ネットワークを用いた制裁逃れはいまも大規模に展開されている。

北朝鮮と国連禁輸品を取引した制裁違反国は、中国、エルサルバドル、ガーナ、インド、ニカラグア、セルビア、タイ、ロシア、メキシコ、ボリビア、コスタリカ、マレーシア、ホンジュラス、南アフリカなど世界中に存在する。

不正取引のために北朝鮮は、ロシアや中国、シンガポール、台湾などにも協力者を有しており、英国領バージン諸島や香港などの「租税回避地」に設立したフロント企業を通じて取引資金を移動している。

石油製品の瀬取りも大規模に継続しており、最近は中国の領海で行なわれることが多いようだ。国連パネルは、一度に5万7000バレル強もの大量の石油製品(取引額は6億円以上)が瀬取りされた大胆な密輸事件についても報告している。

北朝鮮は日本や欧州から、多数の高級車を含む、さまざまな贅沢品も堂々と調達している。国連制裁網があるにもかかわらず、新型の高級乗用車を調達し、それらを海外の首脳との会談の際に使用している。

贅沢品の不正調達を主導する朝鮮労働党の「39号室」との関連が指摘されるシンガポール企業がある。

この企業の関係者は、オーストラリア、中国、コンゴ共和国、リベリア、マレーシア、ナミビア、パキスタン、スペイン、スイス、英国など、世界各地の国々と連絡を取り合っていたことも判明している。

海外の調査機関によると、このシンガポール企業は、北朝鮮との関係が指摘されてきた、日本国内の複数の企業とも取引があったという。北朝鮮の密輸ネットワークはいまも機能している。

なかでも、ロシアと中国の制裁違反への関与は深刻だ。いまや中国企業だけでなく、多数のロシア企業にも制裁違反の疑いが掛けられている。

たとえば、国連制裁では北朝鮮との合弁企業が禁じられているため、本来、北朝鮮人を株主とする外国企業が存在してはならない。

しかしロシア政府の場合、自国内にそのような企業があっても、それを「ロシア企業」と見なすので、制裁対象の「合弁企業」ではない、と言い張っている。制裁逃れの屁理屈もここまでくると、意のある責任逃れである。

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