ホーム » Voice » 経済・経営 » 日本企業の「終身雇用制」を破綻させた“真犯人”

日本企業の「終身雇用制」を破綻させた“真犯人”

2019年06月11日 公開

岩田規久男(元日銀副総裁)

 

90年代に入って急にグローバル化が進んだのか

それでは、90年代に入って、日本的雇用慣行のデメリットがメリットを上回るようになるほど、急激にグローバル化が進んだのでしょうか。グローバル化をどのような指標で見るかは難しい問題ですが、ここでは、世界の輸出額と直接投資額およびそれらの対GDP比で見てみましょう。

財サービスの日本と世界の輸出金額

図表6─2は、90年代の世界の輸出額は85年以降の趨勢線上に沿って増加しており、90年代に入って急激に増加し始めたわけではないことを示しています。

世界の輸出額がそれまでの趨勢線を離れて急激な増加に転ずるのは、02年以降で、日本の輸出額も同年以降、急増しています。

世界と日本の輸出額のGDP比

図表6─3は、90年代に入って、世界の輸出額の世界全体のGDPに対する比率は80年代よりもかなり上昇しましたが、90年代前半の日本の輸出額の対日本のGDP比率は80年代よりも低下したことを示しています。

この低下が生じたのは、GDPデフレーター(物価変動指数)の前年比が94年まで低下しつつもプラスを維持したのに対して、輸出デフレーターの前年比は91年から94年までマイナスが続いたためです。

1980年代から2009年までの円の名目実質実効為替レート指数

このように、91年以降94年まで輸出デフレーターの前年比がマイナスになったのは、図表6─4に示されているように、91年〜95年まで急速な円の名目実質実効為替レートが上昇した(円高になった)ため、日本の輸出企業が円建て輸出価格を引き下げることによって実質実効為替レートを低位に安定化させようと努力し、名目の円高によって引き起こされる輸出の減少を食い止めようとしたからです。

次に、90年代に入って、直接投資がどのように変化したかを見てみましょう。

世界と日本の直接投資の対GDP比の推移

図表6─5は、90年代前半の直接投資のGDP比は、世界についても、日本についても、80年代とそれほどの差がないことを示しています。

以上から、90年代前半に、日本企業が、日本的雇用慣行が原因でグローバル競争から脱落し始めたという説は妥当ではない、と考えられます。

図表6─5からわかるように、80年代以降、企業の対外直接投資のGDP比は、世界の直接投資のGDP比とほぼ同じペースで変動しつつ、上昇傾向を示しており、日本的経営が世界のグローバル化に遅れをとっているようには見えません。

次のページ
デフレ下では日本的経営を守れない >



Voice購入

2019年9月号

Voice 2019年9月号

発売日:2019年08月10日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

今なお苦しむ「氷河期世代」を生み出した“真犯人”

岩田規久男(元日銀副総裁)

「デフレで得をしたのは年金受給者」アベノミクスを実行した元日銀副総裁の指摘

岩田規久男(元日銀副総裁)

加速するGAFAへの人材流出 「日本型雇用」が“日本人から”憎まれている現実

橘玲(たちばなあきら:作家)
日本最大級の癒しイベント出展社募集中

アクセスランキング

  • Twitterでシェアする
日本最大級の癒しイベント出展社募集中
×

21世紀のよりよい社会を実現するための提言誌として、
つねに新鮮な視点と確かなビジョンを提起する総合月刊誌です。