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平均年齢60歳、タクシードライバーが抱える“難題”

2019年06月14日 公開

伊藤安海(山梨大学大学院総合研究部教授)

※画像はイメージです。

高齢者のドライバーによる事故が頻繁に報道されているなか、その具体的解決策を巡る議論は深まっているとはいえない。高齢ドライバーの免許返納をどのように進めるべきなのか、高齢者のみならずすべてのドライバーが気をつけるべきことは何か。山梨大学大学院総合研究部教授で交通事故に関する問題に詳しい伊藤安海氏による提言。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年7月号)伊藤安海氏の「高齢ドライバー事故をいかに防ぐか」より一部抜粋・編集したものです。

 

スムーズに免許返納を進めるために

「生活を送るために車が必要」であるだけではなく、運転が「生きがい」になっている高齢者が多いことも、高齢ドライバーの免許返納が進まない要因です。

いまの時代の高齢ドライバーにとって、自動車にはその人の青春や人生、思い出やプライドが詰まっています。いまの若い世代にとってのスマートフォンのような存在といってもいいかもしれません。

もし、高齢になった私が家族や友人から「スマホの操作ミスで財産を失い、家族の個人情報を流失させたら大変だから、もう解約して!」といわれたら……。おそらく素直に従えないと思います。

さまざまな事情を抱える高齢者に寄り添いながら、スムーズに免許返納を進めるためには、運転に不安のあるドライバーや家族からの相談を警察署や運転免許センターが受け付ける「運転適性相談窓口」を活用するべきです。看護師等が免許返納後の生活相談にのってくれるところもあります。

とはいっても、運転能力が大きく低下した高齢ドライバーに対して、いきなり免許返納を促した結果、ひどく反発された経験をもつご家族が多いのではないでしょうか。

理想は、運転が比較的上手なうちに、今後どういう状況になったら車を乗り換えるか、運転をやめるかなど、家族でコミュニケーションをとって決めておくことです。

車がなくなったら、どんな交通手段を使うのか、どこに住み、どんな生活を送るのか、話し合いは早ければ早いほど効果的です。

すでに運転が危険になり始めている高齢ドライバーについては、現在わが国で導入が検討されている限定条件付免許制度をどのように運用するかがカギを握っています。

じつは、ドライバーの能力低下に応じて運転をすることが許される「時間」や「地域」を制限した限定条件付免許制度を導入する国や地域は近年増えています。

日本では現在、警察庁が「時間限定」「地域限定」に加えて「サポカー(安全運転サポート車)限定」の限定条件付免許制度の導入を検討しています。

いままでどおりの自動車に頼った生活は難しくなりはじめていても、「自宅の周辺の走り慣れた地域で、夜間や雨天時などは運転せず、最新の運転アシスト機能が搭載された自動車であれば、あと5年くらいは安全に運転できるだろう」という高齢ドライバーはたくさんいることでしょう。

限定条件付免許制度が施行される際には、それによって生み出された免許返納までの猶予期間を返納後の生活設計に充てる考えが、同時に広まってほしいと思います。

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