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政局再編はあるか、自民党若手議員の“可能性”

2019年06月21日 公開
2019年06月24日 更新

松井孝治(慶應義塾大学総合政策学部教授)

政局のうねりは自民党の若手議員から?

先述のとおり、世の中にうねりを起こすために、野党がめざすべきは、穏健保守から中道、そしてセンターレフトまでを基軸に置いて、社会的に寛容度と包摂性の高い政策を打ち出していくことだと考える。

経済では「脱成長」を軸にしてしまうと、社会に夢や活力が欠けるし、そもそも社会保障が維持できず生活の質も維持できなくなるから、「持続可能な成長」を志向する。

そういった社会を実現するためには、官だけに依存しない互助的な地域共同体を構築せざるをえないし、従来型の官が保障する社会保障を絶対視する高齢者にとっては多少厳しいこともいわざるをえない。

こうした点も含めて、野党は、この際、分裂や紛糾を恐れず、基本政策を党内で議論し直し、もう一度政権公約を練り直すべきなのではなかろうか。

2009年から12年に民主党がマニフェストで失敗して以来、じつはどの政党も本格的な政権公約策定に踏み出せていない。

与野党問わず有能な若手議員には、広く政権公約づくりの議論が行なわれないことへの不満もあるという。与党事前審査の必要性を力説するならば、本来行なうべきは草の根からの政権公約の議論であることは明らかであろう。

自民党は小泉進次郎氏をはじめ、若手が率先して政策を研究し議論している。ただ自民党内では、そうした議論を歓迎する議員ばかりでないとも聞く。

野党が真面目に政策議論を重ねていけば、いまは現実性がなくとも、政界の一寸先は闇。有権者に困難な選択を迫る局面はこれから先10年程度で必ず何度も訪れる。

そんな折、現状の党派的な立場を超えて、政策軸に応じて、新たに政治グループが競争的に再編される機会は必ず訪れると思われる。

安倍政権への支持率は安定しているものの、反安倍を鸚鵡返しにする野党と比較して消極的支持をしている国民がその半数程度は存在することを忘れてはならない。

政治闘争色の薄い与野党の若手が新たな動きを見せれば、国民は関心を寄せるだろう。そして責任をもって包摂のある社会をつくることを主張すれば、政治の世界は変わっていくのではないか。

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