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「アメリカを偉大なままに」 トランプ再選に有利な4つの条件

2019年07月09日 公開

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

多様化が進む民主党の大統領候補

しかも、民主党は左傾化して分裂している。トランプによれば、民主党に票を投じることは社会主義に与することである。

バイデンの次に人気が高いのは、自称民主社会主義者のバーニー・サンダース上院議員とエリザベス・ウォーレン上院議員である。前者は公立大学の学費無償化を唱え、後者は富裕層への課税強化を主張している。

いまや4700万人ものアメリカ人が大学の学資ローンを抱えており、その総額は1兆6000億ドルに上る。また、上位1%の富裕層が全米の富の2割以上を有するのに対して、下位50%ではわずか1割である。

この2人の左派候補者の支持率を合計すると、ほぼバイデンの支持率に近くなる。つまり、民主党は中道穏健路線と左派路線に割れており、予備選挙後に結束することが勝利の大前提なのである。

ちなみに、ウォーレンはネイティブ・インディアンの血を引く女性で、かつてトランプに「ポカホンタス」と揶揄された。

彼女以外にも黒人女性のカマラ・ハリス上院議員など、民主党の大統領候補は女性や黒人、ラティーノ、アジア系など社会の多様化を反映している。この多様化への反発を、トランプは体現しているのである。

筆頭候補としてのバイデンには、期待値の高さという難点もある。そのため、緒戦で連敗すれば、急激に失速するかもしれない。

予備選挙はアイオワに始まり、ニューハンプシャー、サウス・カロライナと続く。サウス・カロライナは黒人人口が多く、黒人のあいだでは、バイデンは黒人候補以上に人気が高い。オバマの副大統領を8年間忠実に務めたからである。おそらく、サウス・カロライナはバイデンの手中にある。

だが、ニューハンプシャーでバイデンが勝つことは容易ではない。この州はバーモントとマサチューセッツに隣接しているからである。前者はサンダースの、後者はウォーレンの選出州なのである。

そこで、最初のアイオワが鍵になる。バイデンがここで負ければ、ニューハンプシャーで連敗する可能性が高く、サウス・カロライナまで勢いを維持できないかもしれない。

民主党にとって、連邦議会、とくに上院選挙も問題である。現在の議席分布は共和党53、民主党(無所属を含む)47である。上院での逆転には、大統領選挙で民主党が勝てればあと3議席、さもなければ4議席の上乗せが必要である。

前者の場合、副大統領が上院議長を兼ねるから、50対50でも民主党の意向が通る。だが、この3~4議席の上乗せが、なかなか困難なのである。

上院議員選挙で勝てそうな民主党の候補者が、大統領選挙に立候補したり、出馬を辞退したりしているからである。

たとえば、昨年の中間選挙で「オバマの再来」と呼ばれたベト・オローク前下院議員は、テキサスで上院の議席を現職のテッド・クルーズと競い、僅差で敗れた。

オロークが再び上院選挙に出馬すれば、共和党のもう1人の現職を打倒する可能性はかなり高い。しかし、彼は大統領選挙へ出馬を表明しているのである。

このオロークは、大統領選挙のある11月の第1月曜日の次の火曜日を休日にするなどして、2024年の大統領選挙では、投票者数を3500万人増やし、投票率を65%にまで引き上げることを提案している。そうすれば、ラティーノや黒人、若者の投票が増えるであろう。

また、同じく大統領選挙に立候補を表明したピート・ブーティジェッジ(インディアナ州サウスベンド市長)は、最高裁判所改革を唱え、判事の数を現行の9人から6人増やし、判事任命の党派性を弱めようとしている。

いずれも民主主義の再建に関わる興味深い提案だが、上院で民主党が多数を獲得しないかぎり、実現は不可能である。

しかも、オロークもブーティジェッジも、大統領候補になることはなかろうし、したがって、大統領になることもなかろう。

もし後者が大統領またはその候補となれば、37歳と史上最年少、ゲイとして史上初、アフガニスタン戦争従軍経験者としても史上初となる。

セス・モールトン下院議員も、40歳の若さで大統領選挙に出馬表明している。ブーティジェッジ同様、モールトンもハーバード大学卒業でイラクへの従軍経験がある(彼は妻帯の異性愛者である)。

総じてエリートは従軍経験をもたないが(クリントンもブッシュ・ジュニアもトランプもベトナムに従軍していない)、こうした従軍経験のある中道派の若手が育つかどうかに、民主党の将来はかかっているのかもしれない。



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