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トランプだけではない、アメリカの対中不信は“積年の産物”

2019年07月12日 公開

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

村田晃嗣写真:吉田和本

トランプ大統領は中国に対して厳しい姿勢で「ディール」を迫り、圧力をかけている。一方、対中強硬姿勢をとるのはトランプ大統領だけではなく、アメリカの外交エリートが広く共有する“積年の不満”である、と同志社大学の村田晃嗣教授は指摘する。世界に影響を及ぼす米中覇権戦争の行方を分析。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年8月号)、村田晃嗣氏の「トランプ再選のシナリオとプロレス外交」より一部抜粋・編集したものです。

 

米中対立はたんなる貿易摩擦ではなく覇権戦争

共和党対民主党、トランプ対反トランプと、アメリカ政治が党派性を増すなかで、超党派のコンセンサスの成立する数少ないテーマの1つが、中国である。

われわれの眼前に展開しているのは、たんなる貿易摩擦ではなく長期的な覇権戦争である。アメリカの対中不信は積年の産物であり、エリート層に広範に共有されている。

民主党系のエリートなら、中国の人権問題にも敏感であろう。内政と外交の多くで、トランプはエリートたちと認識を共有してこなかった。むしろ、その点を強調して一部の支持を固めたのである。

だが、彼は二国間貿易に固執し、勝つためには手段を選ばぬ強引さを看板にしてきた。こうして、対中強硬姿勢で、エリート層とトランプとの「同衾」が成立したのである。

最近、対中強硬派のデヴィッド・スティルウェル退役空軍准将が東アジア太平洋問題担当国務次官補に正式決定した人事も、その象徴である(前任者の辞任以来、このポストは2年以上空席であった)。

大統領選挙と景気の動向を見据えて、トランプは一時的に中国と妥協するかもしれないが、それはあくまで一時的なものであり、米中の対立は貿易から投資、人的交流、金融と広がっている。

とくに、先端の科学技術分野で中国に敗れれば、パラダイム・チェンジが起こるかもしれないと、アメリカは恐れている。

米ソ冷戦の最中に、人工衛星の打ち上げでアメリカはソ連に先を越された。1957年のスプートニク・ショックである。中国を相手に第二のスプートニク・ショックが起こることを、アメリカは強く懸念している。

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1970年代の米中ソ戦略的三角形に似ている >



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