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トランプだけではない、アメリカの対中不信は“積年の産物”

2019年07月12日 公開
2022年07月08日 更新

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

共和党エリートの不信感とトランプのプロレス外交が融合

当然、朝鮮半島も米中対立に影響されている。一方で、中国はアメリカを念頭に北朝鮮への影響を誇示し、北朝鮮も中国を盾にアメリカの圧力をかわそうとする。

他方で、トランプ政権は北朝鮮に「最大限の圧力」をかけながら、米朝の直接ディールを示唆して平壌から妥協を引き出そうとしている。

北朝鮮の金正恩委員長はアメリカに「年内までの英断」を期待しており、最近トランプ大統領は金委員長に「素晴らしい内容」の親書を送ったという。三度目の米朝首脳会談になるかもしれない。

問題は北朝鮮問題をめぐって日米韓の足並みが揃わないことで、とりわけ韓国は漂流している。在韓米軍撤退の可能性さえ囁かれる点でも、残念ながら現状は70年代に似ている(拙著『大統領の挫折――カーター政権の在韓米軍撤退政策』有斐閣を参照)。

トランプ政権はイランにも「最大限の圧力」をかけ、両国関係はにわかに緊張の度を高めている。こちらも70年代末以来の対立関係である。

アメリカの第5艦隊がペルシア湾のパトロールを強化するなか、イランは米軍のドローン(無人機)を撃墜した。ただし、両者とも慎重に事態のエスカレーションは回避しようとしているようである。

北朝鮮とイランに同時に「最大限の圧力」をかけ続けることは危険だし、どちらかで武力衝突に至れば、トランプ再選には大きなマイナス材料となろう。

また、一方で「最大限の圧力」が機能しなければ、他方でも信憑性を失う。北朝鮮にしてもイランにしても、共和党系の外交・安全保障エリートたちの積年の不信感とトランプ大統領の強気のショーマンシップ、プロレス外交が融合している。

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