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実は「地対艦ミサイル先進国」日本の実力

2019年07月11日 公開

北村淳(軍事社会学者)

 

障害物を避けながら飛翔する日本の高性能「地対艦ミサイル」

西側諸国としては珍しく地対艦ミサイルを開発製造しているだけでなく、地対艦ミサイルの運用に特化した世界的に稀有な地対艦ミサイル部隊も保有している国が、日本である。

日本が独自に開発し製造した地対艦ミサイルシステムは「88式地対艦誘導弾」ならびにその改良型の「12式地対艦誘導弾」である。

「88式地対艦誘導弾」(以下、本稿ではミサイル本体と混同するのを避けるため、88式地対艦ミサイルシステムと記述する)は、射程距離が150㎞以上(おそらく200㎞近く)で飛翔速度は1150㎞/hと考えられている。

この地対艦ミサイルシステムはレーダー装置、指揮統制装置、射撃管制装置、ミサイル発射装置などから構成されており、大型ならびに中型トラックに搭載されて陸上を自由に移動することができる。

88式地対艦ミサイルシステムの改良型である「12式地対艦誘導弾」(以下、12式地対艦ミサイルシステム)は、目標捕捉能力をはじめとする攻撃性能が向上し、射程距離は200㎞以上(おそらく250㎞近く)に延伸しているものと考えられている。

88式地対艦ミサイルシステムと同じく、レーダー装置や発射装置などシステム構成ユニットはそれぞれトラックに積載される地上移動式兵器である。

これらの日本製地対艦ミサイルシステムは、地形回避飛行能力(超低空を飛行するミサイルが、地上の地形を認識して障害物を避けながら飛翔する能力)を持っている世界的にきわめて稀な地対艦ミサイルだ。

これは、陸上自衛隊の地対艦ミサイルの運用が当初は北海道に侵攻するソ連軍を想定していたために付加された機能である。

すなわち、北海道沿岸域に迫りくるソ連侵攻艦隊に対して、陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊が海岸線付近に展開した場合、ソ連艦艇からの砲撃やミサイル攻撃に晒されてしまう。

そこで地対艦ミサイル連隊は海岸線ではなく内陸奥深くに潜み、沿岸海域に接近したソ連艦艇を内陸から攻撃して撃破する戦術を立案したのである。そのため、地上上空を100㎞以上飛翔するという、対艦ミサイルとしてはきわめて稀なミッションを持たされて開発されたのが、陸上自衛隊の地対艦ミサイルなのである。

 

ロシア海軍を想定して配備される一方で、中国海軍への備えは手薄

陸上自衛隊には「地対艦ミサイル連隊」と呼ばれる地対艦ミサイルに特化した部隊が設置されており、現在、五個部隊が編成されている。

第一地対艦ミサイル連隊(北海道北千歳駐屯地)
第二地対艦ミサイル連隊(北海道美唄駐屯地)
第三地対艦ミサイル連隊(北海道上富良野駐屯地)
第四地対艦ミサイル連隊(青森県八戸駐屯地)
第五地対艦ミサイル連隊(熊本県健軍駐屯地)

この、世界でも稀に見る地対艦ミサイル連隊は、もともとはソ連軍の侵攻に備えるために生み出されたため北海道方面に集中的に配置された。当初は六個連隊が編成されていたが、ロシアの脅威が縮小したため大幅に削減されることとなった。

しかし、中国の東シナ海への侵出姿勢に対応して縮小は一個連隊にとどまり、今後も五個連隊態勢が維持されることになっている。

以上のように、日本は世界に誇れるきわめて高性能な地対艦ミサイルを開発しているだけでなく、世界でも稀な地対艦ミサイル連隊が設置されているという、いわば地対艦ミサイル先進国なのである。

ただし、このように陸上自衛隊は地対艦ミサイル連隊を五個部隊擁しているものの、南西諸島をはじめとする東シナ海方面で中国海軍に備える配置についているのは一個連隊だけである。

残りの四個連隊は北海道と青森県に配備されていてロシア海軍を想定敵としており、日本が直面する軍事的脅威の変化を無視している状態だ。

さすがに近年、島嶼防衛の重要性を日本国防当局自身が口にするようになってきたためか、地対艦ミサイル部隊(地対艦ミサイル連隊ではなく、地対艦ミサイルシステム運用の最小単位の部隊)の石垣島、宮古島、奄美大島への配備が開始されたため、地対艦ミサイル連隊の配置も修正されるものと思われる。



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