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『涼宮ハルヒの憂鬱』に見える、京アニ作品の“こだわり”

2019年09月19日 公開

伊藤弘了(映画研究者)

伊藤弘了京都文化博物館のポスター展示(筆者撮影、以下同)

 

35人が犠牲になった京都アニメーション放火事件。日本を代表するアニメ制作会社を襲ったあまりに理不尽な出来事に、世界中が衝撃を受けた。京都在住の映画研究者である伊藤弘了氏は、京アニの代表作品『涼宮ハルヒの憂鬱』2期の「エンドレスエイト」というエピソードから、同社のアニメ制作へのこだわりを紹介する。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年10月号)、伊藤弘了氏の「京アニ放火事件を悼む」より一部抜粋、編集したものです。

 

「少しでも京アニ再建に力を貸したい」との思い

7月24日には、京都アニメーションが公式の支援金預かり口座を発表した。京アニの発表によれば、この口座には8月26日の時点で20億円以上が振り込まれている。

1000万円の寄付を報告したX JAPANのYOSHIKIや100万円を寄付した小説家の米澤穂信(『氷菓』の原作者)をはじめ、この預かり口座にも著名人による大口の支援が寄せられているが、1万円以下が全体の約8割を占めているのが特徴的である。

この事実は「多額の寄付は無理でも、少しでも京アニの再建に力を貸したい」という思いを抱える多数の人びとの存在を指し示しているだろう。

京アニ作品にちなんだものとして、お笑いコンビ霜降り明星の粗品による寄付が話題となった。

粗品は7月28日に「長門に来る馬教えてもらった」という文面とともに、競馬で獲得した約115万円を全額京アニに寄付したことを示す画像をツイートした。

「長門」というのは京アニが手がけた人気作品『涼宮ハルヒの憂鬱』(1期の放送は2006年、2期は2009年)の主要キャラクターの1人「長門有希」(CV:茅原実里)のことを指す。

長門は、人類をはるかに凌駕する高度な知性をもった情報生命体(「情報統合思念体」)が、地球人と意思疎通するためにつくり出した存在(「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」)であり、簡単にいえば宇宙人である。

彼女は、人類から見ればほぼ万能とも思える特殊な能力を駆使して、何度も主人公たちの窮地を救う。

一般的に、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~96年)の綾波レイと並んで「無口・無表情」(典型的な「萌え要素」)な美少女キャラクターの代表格と見なされており、のちの作品にも大きな影響を与えている。

個人的なエピソードで恐縮だが、受験生時代に、「長門有希」の名前を成績上位者に載せるために彼女の名前で全国模試を受けたくらいには思い入れのあるキャラクターである(そして、その目論見は一応の成功を収めた)。

未来や過去を行き来することのできる長門にとって、当たり馬券を知ることなど造作もないだろう。

それに加えて、粗品が8番の馬に88万8800円を賭けていることで、作品との結び付きがより強まっている。『ハルヒ』の2期には「エンドレスエイト」という悪名高いエピソードがあり、このタイトルを意識して「8」という数字を並べたことがうかがえるからだ。

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物議を醸した「エンドレスエイト」 >



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