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データ分析でわかった、育休が1年で十分な本当の理由

2019年09月13日 公開
2022年08月01日 更新

山口慎太郎(東京大学経済学部准教授)

正しい情報が「幸せ」につながる

――今年10月から幼児教育・保育の無償化が実施されます。現政権は次世代のための政策を推進しているといえるでしょうか。

【山口】 政府も子育ての重要性は認識していると思います。安倍政権の「新・三本の矢」では「夢をつむぐ子育て支援」が掲げられ、その一環として幼児教育の無償化が位置付けられています。

ただ、子供のためにお金を使うという発想はいいけれども、保育所の供給が追いついていないことは問題です。

幸いにも認可保育所に入れた場合は無償になる一方で、入れなかった人は恩恵を受けることはできません。すると待機児童がいっそう増加し、不公平感が募る恐れがあります。

したがってお金の使い方としては、保育所の供給増加を優先すべきです。保育所の選考に通って利用しているのは、母親がフルタイムで働いている家庭に多い傾向があります。フルタイム勤務の女性は、たいていが大卒以上です。

その一方で、経済的に恵まれない家庭が保育所から弾かれることは少なくない。そうした家庭にも保育所を行き届かせることで、子供の発達にプラスの影響を及ぼすことが期待できます。

――夫婦だけや子供だけではなく、本書のタイトルでもある「家族の幸せ」をめざすべきですね。

【山口】 「幸せ」は主観的なので、直接測ることはできないし、他人が押し付けるべきではないでしょう。でも、正しい情報をもっていれば、少なくとも自分なりの幸せに近づく材料になります。

もちろん、データ分析の結果が100%正しいとは限りません。海外の事例から学べることはあっても、国の構造によって異なる結果が生まれることもある。

ただ、迷信といってもよい誤った情報が流布している状況で、何が本当に正しい情報なのかを見極める一助に本書がなればと思っています。

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2024年5月号

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発売日:2024年04月06日
価格(税込):880円

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