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国際法の日本vs歴史認識の韓国、相容れない対立の本質とは

2019年09月20日 公開

篠田英朗(東京外国語大学教授)

篠田英朗写真:遠藤宏

日韓関係が「戦後最悪」と言われるほど悪化するなか、韓国は8月22日、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を決定した。元徴用工問題を巡っても、日韓の主張はかみ合わない。東京外国語大学教授で国際政治学者の篠田英朗氏が、日韓対立の本質を分析し、日本の「勝算」を提言する。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年10月号)、篠田英朗氏の「国際法の日本vs歴史認識の韓国」より一部抜粋、編集したものです。

 

国際法vs歴史認識の対立構造

地理的近接性からいえば、韓国は日本にとってつねに重要な隣国だ。ただそれにしても、対立の構造は根深い。

日本としては、長期戦になりうることを踏まえ、韓国との適度な距離感を維持しつつ、主張すべきところは主張しながら、紳士的に振る舞うことを心掛け、関係の管理をしていかなければならない。

日本は、元徴用工問題を、日韓請求権協定違反の問題として捉えている。「ホワイト国」からの除外を貿易ルールの運営の問題として説明し、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄をありえない感情論だと捉えている。

これに対して韓国は、元徴用工問題を、日韓請求権協定の対象外となる植民地支配の問題であると主張している。「ホワイト国」からの除外は、歴史を認識しない日本による対抗措置であるため、GSOMIA破棄で対抗するのも仕方がないと訴えている。

日本は、個々の案件を、それぞれの規則に従って処理すべきだと主張している。これに対して韓国は、歴史認識の問題の視点から、包括的に問題群を見ていこうとしている。

つまり、日本と韓国の対立は、国際法を主張する立場と、歴史認識を優先する立場とのあいだの対立の構図だ。お互いの立場はかみ合っていない。

しかし、さらなる問題の発生を招かないとも限らないため、双方共に相手への譲歩はできない。

日本からすれば、元徴用工をめぐる韓国大法院判決を認めてしまえば、日韓請求権協定に風穴があき、20万人ともいわれる元労働者が日本企業数十社に損害賠償を求めることを許すことになる。そこで国際法規範の重要性を強調することになる。

韓国からすれば、大法院判決は国家の威信をかけた歴史認識の問題となってしまったので、その考え方を修正することはできない。歴史認識に関わる事情が発生するたびに、抗議の声を上げ続けなければならない。

この出口のない国際法vs歴史認識の対立構造のなかで、日本は攻め手と防ぎ手を見出していかなければならない。優先的領域では攻め手を、相手が攻めてくる領域では防ぎ手を講じていかなければならない。

つまり日本が「勝ち」をめざして取っていくべき政策は、国際法に関する攻め手と、歴史認識に関する防ぎ手である。

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