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安倍政権のほうが「低所得者に優しい」明確な根拠

2019年09月20日 公開
2022年01月27日 更新

吉松崇(経済金融アナリスト)

 

安倍政権のほうが低所得者を意識している?

もちろん、左派政党低迷の背景には、民主党政権時代(2009~2012年)に経済政策で成果を挙げられず、外交・安全保障政策で現実的な対応が取れず(沖縄の米軍基地をめぐる対米交渉、尖閣列島をめぐる中国との外交)、稚拙さを露呈したことの影響が大きいのは間違いないが、それだけではないだろう。

『労働者の味方をやめた世界の左派政党』の2章初めのほうで指摘したが、私は、自民党・安倍政権のほうが左派政党以上に低所得者を意識した経済政策運営を行っているからではないかと思っている。だからこそ、中間層(あるいは無党派層)が2014年以降、左派政党から離反しているのではないだろうか?

自民党・安倍政権のほうが左派政党より「低所得者に優しい」ことは、データを見れば明らかだ。経済格差を表す代表的な指標は、ジニ係数と相対的貧困率である。これらを、平成29年版厚生労働白書で見ていく。

日本の所得再分配後の等価所得で見たジニ係数は、1992年に0.3074であったものが、金融危機真っ只中の1998年に0.3326でピークを付ける。この指標で見るかぎり、1998年が最悪の年である。

その後2000年代は0.32台で推移し、民主党政権下の2010年には0.3162、そして2014年には0.3076まで低下した。これは、1995年以降では最も低い値である。ここで「等価所得」とは家計の所得を世帯人数の平方根で除して、1人当たり所得を平準化したものである。

なお、ジニ係数のピークが1998年で、2000年代に入り緩やかに低下しているのは年金制度の深化の影響で、高齢者世帯のなかでの極端な低所得層の比率が減少しているからである【注 厚生労働省(2017)『平成29年版厚生労働白書』60頁】。

したがって、2000年代の低下トレンドはある程度割り引いて見る必要があるが、それでも2010年から14年の低下幅は大きい。

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