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「攻撃(テロ)再燃ある」元IRA民兵の警告

2019年09月24日 公開

岡部伸(産経新聞論説委員・前ロンドン支局長)

岡部伸※プロテスタント系とカトリック系住民の衝突を避けるため、居住地域を隔てる通称「平和の壁」。北アイルランド・ベルファストにて(写真:岡部伸)

ブレグジット(イギリスのEU離脱)を目指すボリス・ジョンソン首相。現在、最大の障壁となっているのが、北アイルランド国境問題である。これまで日本では、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドとの間に国境管理を巡る問題が存在することは、あまり知られていなかったかもしれない。だが、これは大変重要な問題である。

ブレグジットが実現すれば、北アイルランドとアイルランドの間に、再び厳重な国境管理が実施されることになる。しかし、そうなればカトリック、プロテスタント両派を隔てる分断が再び鮮明化し、和平から紛争に逆戻りして流血事件が起きるのではないか。住民たちの間で不安が広がっている。

※本稿は、岡部伸著『イギリスの失敗』(PHP新書)より、一部抜粋・編集したものです。

 

約3500人が犠牲になった武力闘争

アイルランド人の多くは、カトリックである。だが、北アイルランドにはイングランドから移り住んだ人が多く、英国と同様、プロテスタントの人たちが多く住み、カトリック教徒は差別されていた。

アイルランドとの統一を目指すカトリック系住民と英国残留を望むプロテスタント系住民との間で、1968年から約30年にわたって紛争が続いた(北アイルランド紛争)。

テロによる犠牲者は約3500人。しかし、英国とアイルランドが73年、同時にEC(欧州共同体)に加盟したことで、北アイルランドとアイルランドの国境検査は撤廃された。

EU単一市場下で人や物が自由に移動するようになり、北アイルランドを巡る紛争は下火になる。

98年には、英国とアイルランドの間に和平合意が成立し、紛争に終止符が打たれた(北アイルランドの中心都市、ベルファストで結ばれたことから「ベルファスト合意」と呼ばれる)。

しかし、この合意は、両国がEUに加盟して国境がなくなったことが前提となっている。もし英国がEUから合意なく離脱すれば、北アイルランドとアイルランドの南北間約500キロに税関検査などの国境管理が必要となり、和平の前提となった自由な人や物の往来に重大な支障が出る。

 

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両派の住民の和解は進んでいない >

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