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200年前のベストセラーに見えた「フランス革命」を“罵倒”するイギリス人



2019年10月18日 公開

エドマンド・バーク、佐藤健志(訳)

フランス革命の省察

歴史に大きく刻まれた「フランス革命」は、これ以後の世界史において、あらゆる革命の基本になった。

だがその革命勃発直後の1790年に、市民革命の代表的な事例として賞賛されたフランス革命に対して、大批判を展開し世界的な大ベストセラーとなった本がある。

イギリスの政治思想家であるエドマンド・バークにより1790年に上梓された『フランス革命の省察(Reflections on the Revolution in France)』である。

同書は当時の英国首相のウィリアム・ピットにも「この罵倒は芸術的だ」と言わしめるなど、各国首脳から"キワモノ本"扱いを受けたにもかかわらず、現代に至るまでフランス革命の本質を見極めた"名著"として、200年以上も読みつがれているのだ。

本稿では、評論家の佐藤健志氏による編訳『【新訳】フランス革命の省察』より、原初の第1章にあたる部分を抜粋して紹介する。

※本稿はエドマンド・バーク著/佐藤健志編著『【新訳】フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』より一部抜粋・編集したものです。
※18世紀の書の翻訳という性質上、原著の表現をそのまま用いていおります。

 

私は革命支持派ではない

フランスで起きている事態をどう思うか、あらためてぜひ知りたいとのこと。断わっておけば、私は自分の意見にさほどの価値があるとは思っていない。

表明してもしなくても、大した違いはないという程度だろう。最初の返事をすぐに送らなかったのも、こんな文章をわざわざ読ませなくても、と迷ったためだった。

私の見解は個人的なものであり、何らかのグループを代表して書いているわけでもなければ、受け売りをしているわけでもない。それは前回も今回も同じである。内容に誤りがあれば、間違えたのは私であり、評判を落とすのも私ということだ。

先の返事からも明らかだろうが、私はこの革命を、残念ながら非常にいかがわしいものと見なしている。フランスに理性的な自由の気風が満ちるのは大賛成だ。

そしてフランス人は、その気風にふさわしい国家と政府を築き上げるべく、真剣に努力しているものと思う。だが、それでも眉に唾をつけざるをえないのである。

受け取った手紙から察するに、君は私を革命支持派と想像したようだ。なるほどロンドンの政治団体には、フランス革命をおおっぴら、かつ大真面目に称賛するものも存在している。

一つは憲法協会で、もう一つは名誉革命協会である。

(訳注:「名誉革命」は1680年代のイギリスで起きた政変。国王ジェームズ二世と議会の対立に起因するが、武力抗争なしに解決された。ジェームズ二世は国外に逃れ、オランダに嫁いでいた娘メアリが、夫であるオラニエ公ウィレムともども、議会の招請を受けて即位している)

また私はいくつかの政治団体に所属しているが、それらもわが国の憲法と名誉革命の両方を高く評価するものである。流血沙汰を避けつつ国家の危機を収拾した名誉革命の意義と、当の国家の根本をなす憲法を擁護する点にかけては、誰にもひけをとらぬつもりだ。

しかし、だからこそ断わっておかねばならない。世の中には、国体の基盤たる憲法を愛するとか、名誉革命の偉業をたたえるとか言いつつ、何かにつけてそれらの理念を逸脱したがる者たちもいる。

イギリスの国体は、明確な目的意識を持ちながらも、慎重に熟慮を重ねて築かれた。名誉革命にしても、かかる「明確な熟慮」の精神を踏まえることで可能になったのである。国を真に愛する者は、些細なきっかけでこの精神を捨て去りかねない連中と一緒くたにされないよう注意しなければならない。

本題に入る前にハッキリさせておこう。

憲法協会にしろ、名誉革命協会にしろ、私はいっさい関係していない。ただしフランスでは、もっぱら名誉革命協会のほうが、革命支持派として感謝や称賛を受けているようなので、以後はこちらの団体だけを取り上げることにする。

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