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「戦争のリスクは増している」 アジア地域安全保障の専門家が指摘

2019年10月21日 公開
2023年01月13日 更新

マイケル・オースリン(スタンフォード大学フーバー研究所リサーチフェロー)

マイケル・オースリン

米中には妥協できない対立点がある

――東アジアをめぐる安全保障環境は、冷戦期から激変しました。とりわけ大きな変化は、中国の経済的・軍事的台頭でしょう。現在は「米中新冷戦」の時代とも呼ばれますが、両大国の対立は軍事・経済・価値をめぐる覇権争いといえるでしょうか。

【オースリン】 中国には、これまでアジアでもっていたポジションと影響力を取り戻そうとするパワーが働いています。アメリカによって構築された国際秩序に対して、中国は不満を覚えている。

一帯一路(現代版シルクロード経済圏構想)をみると、中国がアジア、インド・太平洋、そしてユーラシア地域で覇権を握りたいことは明らかです。

アメリカにとっての問題は、アジアの他の国が同等なパワーをもつことを中国が嫌がっていることです。中国はアジア諸国を支配したいのです。

中国にとっての問題は、アメリカが依然として世界最大の経済力とアジア地域で非常にアクティブな軍隊をもつ、最強国であり続けることです。

つまり米中は、アジアにおけるパワーと秩序に対して衝突するビジョンをもっている。アメリカをアジアの覇権国と呼べるかどうかはわかりませんが、安全保障面での支配的な役割を担っていることは確かです。

経済的にも政治的にも影響力がある。その一方で中国は、覇権国になりたがっている。したがって両国は、世界の他の地域と同様に、アジアでも妥協できない対立点をもっているといえるでしょう。

――米中の利害は本質的に対立している。

【オースリン】 中国はアメリカだけではなく、日本のことも懸念しています。中国は日本を、自分たちの次にパワフルなアジアの国とみている。

中国にはないような政治的合意、連帯性の国であると捉えています。日本は高度な軍隊(自衛隊)を保有し、多くの点で中国軍に匹敵する能力をもっています。

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