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今こそ、「日英米三国同盟」を考える時

2019年11月01日 公開

岡部伸(産経新聞論説委員・前ロンドン支局長)

岡部伸※画像はイメージです。

英国で12月12日の総選挙実施が決まった。与党の保守党が過半数を制すれば、ジョンソン首相が10月17日にEUと合意した離脱協定案を議会で承認し、1月末までに離脱を実現する目論見である。しかし、現段階の支持率で労働党を15ポイントほど上回っているとはいえ、保守党の勝利が確実なわけではなく、依然として先行きは不透明である。保守党が惨敗して議会から離脱協定案の承認を得られず、やむなく「合意なき離脱」となる可能性がまったく消えたわけではない。

ただ、ジョンソン首相はいかなるかたちであっても、EUからの離脱を実現させるだろう。その後、英国はどうするのか──。

メイ前首相は、EU離脱後の新たな経済、外交、軍事的な戦略として、インド洋から太平洋へと英国が再び進出する「グローバル・ブリテン」構想を掲げた。ジョンソン首相はこの「グローバル・ブリテン」構想を机上の空論ではなく、実現すべき戦略と考えていることは間違いないだろう。

そしてその基盤となるのは、日本、英国の「日英同盟」、あるいは日英が互いに強い同盟関係を結ぶ米国を交えた「日米英三国同盟」ではなかろうか。

※本稿は、岡部伸著『イギリスの失敗』(PHP新書)より、一部抜粋・編集したものです。

 

ユーラシア大陸の両端に位置する日英の関係強化

日英はユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家で、安全のためにユーラシアの内陸国家を牽制する宿命を負っている。

日本は中国の海洋進出を警戒し、英国はロシアの覇権を抑え込んできた。英国はロシア、日本は中国との脅威にそれぞれ対峙しているように見えるが、日本と英国は、同じユーラシア大陸と対峙している共通性がある。

日英はそれぞれ米国と深い同盟関係で結ばれ、インテリジェンスや軍事、外交など、あらゆる分野で協力関係にある。

米国第一主義を唱えるトランプ大統領率いる超大国の米国が、内政優先から「世界の警察官」としての立場が揺らぐことになれば、同盟国として自由と民主主義、法の支配などの価値観を共有する日英両国は、今こそユーラシア大陸の東西から協力して米国を支えなくてはならないだろう。

またユーラシア大陸の両端に位置する日英両国の関係の強化は、日本の外交の選択肢を広げ、東アジア、アジア太平洋地域の新たな秩序形成にも道を拓く。

日本は長らく国連と日米同盟を外交の基軸としてきたが、テロやサイバー攻撃、デジタル選挙介入など、二国間同盟だけでは対応できない問題が増え、さりとて国連も安全保障理事会の機能不全で本来の機能を失って久しい。

一方、英国は大英帝国時代から黄昏れたとはいえ、米英同盟を基軸に常任理事国として、国連安保理や北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合など多国間協議の場を活用し、存在感を維持してきた。

グローバル化で多極化が進み、世界におけるアジアの影響力が増す新時代に、南シナ海からインド洋、中東にかけた地域において、インドやスリランカ、シンガポール、バングラデシュなど、英連邦の幅広いネットワークを持つ英国の情報や分析力は、日本にとっても米国にとっても欠かせない。

ましてや英国は欧州を脱して「スエズ以東」へ回帰を目指している。日英協力は、民主的価値や海洋における法の支配を強化し、アジア太平洋で新たな安全保障の枠組みを模索する米国にも有意義だ。

 

日英が米国の世界関与を促す

日英ともに、新たな日英協力関係と米国との同盟関係をいかに調和させるかが重要となる。いずれは日英米の三国の同盟関係への発展が考えられよう。

英の外交シンクタンク「ヘンリー・ジャクソン協会」アジア研究所長のヘミングズ氏は、「トランプ米政権の政策転換で米国の世界関与に陰りが出た現在、米国と同盟にある日英が米国を世界の秩序維持への積極関与を継続するように、三極で関係を構築することが重要」と日英米の三国関係に期待感を示す。

日英協力、さらに米国を加えた三カ国の協力強化は、軍事、経済両面で台頭する中国、ロシアを牽制し、中露との未来志向の関係確立にもつながる。

実際に日米とオーストラリア、日米とインドなど、三国間での安全保障協力は進んでいる。米国との同盟関係を共有する国同士が個別に同盟関係を築くことで、米国との同盟を支えようとしているのである。

このようなネットワーク型の同盟には、NATOにとっての米英同盟のような中軸となる二国間関係が不可欠だ。日英同盟はアジア太平洋地域で、その中軸になり得るのではなかろうか。



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